国会論戦・提案

2016年05月10日

当事者の声に応えよ~障害者総合支援法改定案 衆院厚労委 参考人質疑

当事者の声に応えよ

障害者総合支援法改定案 堀内氏が指摘

衆院厚労委 参考人質疑

 
 衆院厚生労働委員会は10日、障害者総合支援法改定案の参考人質疑を行いました。

 参考人の佐藤久夫・日本社会事業大学特任教授は、障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会の部会長(当時)として総合支援法に反映させるべき内容を当事者参加で取りまとめた「骨格提言」(2011年)と、改定案を対比したうえで、今回の改正は「効果はないと言わなければならない」と表明しました。問題点として▽制度の対象からもれる人が残る▽市町村が支援を渋る財政構造を維持▽利用者負担の見直しがない―などを示し、「障害者の地域移行が進むとはとても思えない。『提言』を反映させるべきだ」と強調しました。

 日本ALS(筋萎縮性側索硬化症)協会の金澤公明常務理事は、患者が40歳から介護保険へ移行となり、重い自己負担で生活が圧迫される事態が起きていると指摘しました。

 参考人への質問で日本共産党の堀内照文議員は、総合支援法は自立支援法の看板を変えたにすぎず、「今回の法改定も当事者の声にこたえたものではない」と指摘。佐藤氏は、財政を口実に改革に背を向けていると述べ、「“基本的人権はお金がないので我慢してください”とはいえない性質のもの。障害者福祉サービスは基本的人権に直結し、財源がないからと制限する社会であってはならない」と述べました。

 ALS患者支援の実態を聞いた堀内氏に対し、金澤氏は「必要な介護時間の保障が患者にとって当然だが、自治体の格差がでている」と不十分な現状を語りました。

(5月11付「しんぶん赤旗」より)

 

 

衆議院会議録情報 第190回国会 厚生労働委員会 第15号
○堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。
 きょうは、貴重な御意見を本当にありがとうございます。限られた時間ですので、早速質問に入りたいと思います。
 初めに、佐藤参考人に伺いたいと思います。
 先生が部会長として、基本合意も受け、骨格提言を取りまとめられたのは、当時民主党政権でしたが、障がい者制度改革推進本部のもとに置かれた推進会議の中の総合福祉部会でした。ここでは、私たちのことを私たち抜きで決めないでと、この原則のとおり、構成メンバーという点でも、またさまざまな運営面でも、当事者参加のもとで進められてまいりました。これにかかわって、ちょっと二点伺いたいんです。
 その際、当事者参加でどういう工夫がされたのか。そして、そういう体験も踏まえて、今回の法案提出に至る議論の経過をどのように見ておられるか。お伺いしたいと思います。
○佐藤参考人 ありがとうございました。
 当事者参加という点での工夫としては、いろいろなことがありますね。
 知的障害のある委員の方には、難しい言葉を説明したりするような補助者を隣につけるとか、会議の前に、きょうのテーマはこういうことですというふうな解説をするとか、ルビ振りの資料を用意するとか、それから、会議の途中でわからない言葉が出てきたらイエローカードを掲げて、会議をとめてその言葉の説明をするようなやり方とか、そんなのが知的障害の委員の方についてはあったり。
 盲聾の方には、指点字の通訳者が四人くらいついてやるというようなことになったり、指点字というのは疲れるので、四十五分たったら休憩を入れるというふうにしたりとか。
 夏の厚労省の講堂が暑くて、脊髄損傷の人が体温調節がうまくできないので体調を壊すというふうなことがあって、かけ合ったところ、いや、しかし、全庁的な節電の事業なのでここだけやれないというふうなことだったので、厚労省のスタッフの方が近くのコンビニに走って氷をたくさん買ってきて、わきに入れるとかですね。
 いろいろな努力を事務局も委員の人たちもやったりしたというふうなことで、そういうようなノウハウもこれからほかでもどんどん生かしていけるといいなというふうに思います。
 それから、今回の改正案の準備の過程なんですが、すぐできることは総合支援法に入れたけれども、検討を要することに関しては三年かけて検討するという約束で三年の検討が入ったわけですけれども、実際、審議会で検討を始めたのは最後の一年余りというふうなことで、拙速に検討したことで自立支援法について問題が起きたということを反省したはずなのに、今度もまたばたばたとやって、しかも、お金がないので余り改革できませんよという雰囲気の中でやってしまったということが残念だなというふうに思います。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 続いて佐藤参考人に伺いたいと思うんですが、この総合支援法は本来、自立支援法を廃止して、基本合意、骨格提言を反映させるために新たに立法されるべきものでした。ところが、支援法から看板をかえただけの不十分なものとなった。今も先生おっしゃっていただきましたが、三年後の見直しに議論が持ち越される。しかし、このたびの法改正もそれに応えたものでないというのは、先生が陳述されたとおりだと思います。当時の大臣答弁も引用していただきました。
 この骨格提言の実現へ、本来の法案のあるべき姿、全面的にもちろん骨格提言が実現するというのが望ましいんだと思うんですけれども、少なくともまずはどういった法改正が必要だったとお考えでしょうか。
○佐藤参考人 資料の二ページ目に、骨格提言に照らした総合支援法とその改正案の問題点のポイントということで、十点ほど挙げさせていただきました。
 この中で、例えば一番目の「地域生活に必要な支援を受ける権利と提供する義務が書かれていない。」ということなどについては、なかなか当時、厚労省も難色を示したというか、権利を保障するのは憲法であって、福祉の法律はできるだけそれを実行するレベルにとどまる、ほかの福祉の法律を差しおいて障害福祉だけそれをやるわけにいかないというふうなことで、骨格提言の一番大事な部分なんですけれども、もっとほかの審議会を含めて総合的に検討しないと、すぐには今度のその法改正には入らないということもあったりするのかなというふうには思います。
 しかし、障害者権利条約がこう書いているわけですから、それが国の憲法に次ぐ法律になったわけですから、これを実行できないはずは本来的にないんだろうと思いますね。そういう意味では、政府というよりは国会がその辺の判断をきちんとして、国のあるべき方向を示すのは国会ですので、そういう議論をぜひやっていただければと思います。
 ほかの十項目も、報酬のあり方とか、検討すれば困難でないことが結構ある。技術的に開発をしなければならないとか専門職の養成が必要だというふうなことで、すぐに実行できないこともあるけれども、それについても実行することを法律で決めて、そのためにこれこれの準備をかけるとか、方向を決めることが何よりも国会としては大事なことなのかなというふうに思います。
 以上です。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 続いて、介護保険の優先原則について、同じく佐藤参考人に伺いたいと思います。
 この法律では、優先原則の立場を改めていません。今回の改定で国が利用者負担の軽減をするというんですが、支援区分などの要件で、対象は、本会議の大臣答弁で、およそ三万人だと見込まれていると。絞られるということになります。それ以外の人は、廃止すべきだった応益負担がかかり、地域で生きるために必要なサービスも制限されてしまいます。
 こういう事態というのは、障害者の権利保障という点で、骨格提言が目指す方向とやはり私は違うというふうに思うんですが、先生のお考えをお聞かせください。
○佐藤参考人 この辺は、恐らく厚労省がかなり苦労をされた部分かなというふうに思います。
 基本合意で、低所得の人がたとえ五千円でも一万円であっても利用者負担が払えないということで、基本合意で低所得者は無料とする、自己負担ゼロにするということを決めたわけです。しかし、その人が今度六十五歳になったら一割負担がかかってくるということになってしまって、収入がふえたわけではないので、障害が軽くなったわけでもないのに一割負担がかかるということで、裁判も起こったという中で、何とかこの問題を解決しようということで取り入れたその施策が、障害福祉の方から介護保険の一部負担を払おうというやり方なんだろうと思いますけれども、根本的に考えて、私は、障害者福祉と介護保険というのはかなり大きく違うんだろうと思います。
 四点ほどあるんだろうと思いますけれども、一つは、一割負担ということですね。二番目は、社会参加を目的としないということ。それから、レディーメードの商品を提供する介護保険と、個別のニーズを尊重しながらオーダーメード的なサービスを提供する障害者福祉との違いもある。それと、サービス量の制限ということがあって、これら四つほど大きな違いがある中で、六十五歳になったから介護保険だよということで単純にやろうとしている。その辺をもうちょっときちんと根本的に見直す必要があるのかなと思います。
○堀内(照)委員 ありがとうございました。
 金澤参考人にお伺いしたいと思います。
 ALSの方で、介護の、先ほど、今度の施策が実現されたとしても、発症時期によって負担軽減がなかなかとれないということで負担が多かったり、あと、サービス利用の抑制に実際つながっているというお話もありました。
 私が聞きたいのは、あわせて、障害福祉サービスの支給という点でも、一日二十四時間介護が必要であっても市町村によっては認められないということで、ALSの方が裁判に訴えられたという例もお聞きしました。これでは必要な支援が受けられないわけですので、そういった障害福祉サービスの支給のあり方という点で改善点なりお考えがありましたらお聞かせください。
○金澤参考人 ありがとうございます。
 先ほど意見の中で言ったんですが、ALSの場合は、在宅なり社会生活する上で、どうしても家族だけじゃなくて人の介護ということが大きなウエートを占めます。そういう意味で、四十歳からの介護保険というのに入れてもらうことにも取り組んで、しました。
 ただ、その中で、二十四時間三百六十五日、本当に介護が必要なわけですね。家族だけでやってもやり切りません。それで、人らしい社会的な生活をするには、やはり他人介護というか社会的介護が充実する必要があります。
 そういう意味で、介護保険は、せいぜい月に五十時間とか六十時間しか使えません。それ以外は訪問入浴等ほかのことで使うんですね。それに上乗せするのは、障害福祉の重度訪問介護だとか居宅介護とかそういう時間になります。
 これに関して、サービスの支給量というものは全国的に見て随分格差があります。多いのは百時間未満が圧倒的なんですけれども、本当に、今度、多い人は八百時間とかそういうところまで出ているところもあります、月です。
 これは何によってそうなるのか。これは、家族介護をどのように評価するかとか何かそんなところで変わってくるんですけれども、要は、やはりもう少し必要な介護の時間はきちっと保障されるということを、これは患者さんから見れば当然のことなんですけれども、それが市町村の解釈というか基準の違いによって出るんですね。
 そういうところから、例えば和歌山なんかでは、家族がやっている中で、介護がきついのでヘルパーを時間をふやしてほしい、そういうことで裁判も起こされました。二十四時間にはなっていませんが、二十時間を超える時間をちゃんと公的には給付するようにしなさい、そういうこともありました。
 そういうことで、まだばらつきなりが多くて、なかなか理解してもらえないのが実情です。
○堀内(照)委員 最後に、済みません、ちょっと時間がないんですけれども、佐藤参考人に、財源の問題で、人間の尊厳と基本的人権のための支援で財政の壁という理由は使うべきでない、私は本当にそのとおりだと思いました。
 一言だけ、この点でおっしゃりたいことがございましたら、お聞かせください。
○佐藤参考人 ありがとうございます。
 ちょっと時間がなくて説明できなかった部分なんですけれども、表現の自由だとか、移動だとか、居住の自由だとか、選挙への参加など政治への参加とか、こういうものは、本当に基本的人権として、どんな状況があっても、お金がないので我慢してくださいと言えない性質のものだろうと思うんですね。
 障害福祉サービスというのは、それをやるために不可欠なものですので、例えば、手話通訳でなければコミュニケーションが図れない、移動支援がなければ選挙にも行けない、そういうようなものですので、ぜいたくなものじゃなくて、本当に基本的人権に直結するものですので、財源がないからということではまずいというか、そういう社会であってはほしくないなというふうに思います。
○堀内(照)委員 ありがとうございました。