国会論戦・提案

2015年07月10日

社福法改定案で公的責任後退

 

社会福祉法 参考人 社福法改定案 公的責任後退 憤り覚える

参考人から批判次々

衆院厚労委 堀内議員質問

 社会福祉法改定案に対する参考人質疑が10日の衆院厚労委員会で行われ、批判や意見が相次ぎました。

 社会福祉施設経営者同友会の茨木範宏会長は、地域公益活動の義務付けは「(国が社会福祉法人に)財政的援助を求めない、不当な関与を行わないとする社会福祉法違反だ」と指摘。「財政状況が厳しいなかで利用者と労働者へのしわ寄せが起こる」とのべ、「拙速な審議採決をやめ、憲法に基づく人権原理が貫かれた制度を求める」とのべました。

 「きょうされん」の赤松英知常務理事は、営利法人との公平性を理由に法人への特別措置を取り払うことは、「社会福祉事業の原則である非営利性、公益性をなし崩しにする」と指摘。地域公益活動の義務付けは「公的責任の後退につながる」とのべ、退職手当共済への公費助成廃止も「福祉人材確保と正反対」と批判しました。

 明治安田生活福祉研究所の松原由美医療・福祉政策研究部長は、福祉法人が「内部保留」をため込んでいるとの議論について「会計上、利益に計上しているが実質はコスト。営利組織の利益とは決定的に異なる」と強調。社会福祉法人吹田みどり福祉会の菊池繁信理事長は、すでに地域公益事業に取り組んでいるとのべ、社会貢献を果たしていないとの議論について「憤りを覚える」とのべました。

 日本共産党の堀内照文議員は、「(義務付けによって)自主的な取り組みの性格が変わってしまうのではないか」と質問。茨木氏は、本体事業と地域公益活動が分けられないのが実態であり、「社会福祉事業がどうあるべきかの議論こそもっとされるべきで、そのなかで社会福祉法人の役割を議論することが必要だ」とのべました。

2015年7月11日(土)しんぶん赤旗より

 

◆議事録 2015年7月10日 衆議院厚生労働委員会 参考人質疑

○堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。
 きょうは皆さん、本当に貴重な御意見ありがとうございます。時間も限られていますので、早速質問をさせていただきたいと思います。
 初めに、松原参考人にお聞きしたいと思います。
 私は、一昨日、この委員会で、社会福祉法人におけるいわゆる内部留保の定義についてお聞きをしましたら、最初の答弁は、貸借対照表上の純資産の額を一番広い内部留保と捉えるんだというものでありました。しかし、参考人もいろいろなところで指摘されているように、内部留保というのは、そもそもは利益剰余金をベースにして、捉えようによってはさまざまな要素を加えていくこともあるんだということでありますが、ですから、私、ちょっとそれはおかしいんじゃないかと問いただしまして、その次の答弁は、社会福祉法人が事業継続に必要な額とそれ以外の額が明らかにできるような基準というものを法制上つくろうというのが今回の法案だという答弁でありました。
 つまり、もうこれは内部留保と関係のない話ではないか。きょうも参考人のお話で、利益としては計上せざるを得ないけれども、実質はコストなんだというお話でありました。社会福祉法人における内部留保という定義は結局はっきりしないというふうに思うわけですが、この点いかがでしょうか。
○松原参考人 社会福祉法人の内部留保をどのように定義するかということについては、計算方法も含めて、今、担当所轄庁が検討しているところと伺っております。
 ちまたで言われている内部留保というのは、先ほど申し上げましたように、BSの貸方の利益剰余金を指して内部留保と一般に言われております。それで、これが過大だ、過大だと。特養や社福だけではなくて、営利企業に対しても過大だと言われているわけですけれども、この利益剰余金というのは、過大だと言われて、使えと言われて、幾ら使ってもここは減っていかないわけですよね。減っていかない部分を内部留保と捉えて、過大だとか活用しろというのは、これはナンセンスではないか。
 そうすると、では、どこを捉えるべきかというと、内部留保のそもそも経営上の意義は何だと考えますと、それは将来事業に対する備えなんですね。備えということは、既に使っちゃっていては困るので、まだ使っていないものということで、借方側にある換金性資産、こちらが実在している内部留保。
 もし過大だとか活用しろという議論であれば、実在している内部留保を捉えて議論をしていくべきだろうと考えております。
○堀内(照)委員 この内部留保論については、茨木参考人にもお聞きしたいと思います。
 大キャンペーンがあって、吐き出せということで、バッシングもひどかったわけですが、この問題を経営者の立場からどう捉えておられるのか、お聞かせください。
○茨木参考人 いわゆる内部留保というのが発端になってこの社会福祉法人制度改革が軌道に乗ったというふうに思っております。つまり、何かこの内部留保問題が、バッシングをする上での一つの大きな柱としてそもそも考えられていたんじゃないかなと思われるぐらいのタイミングで出されてきたというふうに思っております。
 ちょうど、社会福祉法人のあり方検討会が発足して、そのまとめが出たのが昨年ですけれども、前後してすごくマスコミの間で、社会福祉法人はもうけ過ぎているとか、理事長が暴走しているであるとか、いろいろな報道がされました。最近では、一部、あの報道は間違いでしたと謝っている新聞もあるんですね。それぐらいの報道がされる中で、社会福祉法人はもうけ過ぎている、あくどいことをしているということがまるで空気のように伝わってしまった。
 ところが、実際、きょう皆さんがお話をしていますように、多くの社会福祉法人は、本当に真面目にこつこつと仕事をしている。一部社会福祉法人の不正があるのなら、それは行政の指導監査できっちりと正したらいいだけの話で、こんな大きな法制度の改革にしなくてもいいというふうに思っております。
 そういう意味では、内部留保問題というのは、今回の社会福祉法人制度改革を進める上での一つのきっかけではなくて、何か目的的に使われたのではないかというふうに思っております。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 赤松参考人にお聞きしたいと思います。
 今回の法案二十四条第二項で、全ての社会福祉法人にいわゆる社会貢献の事業をすることを努力義務として課しております。国は、義務づけではなくてあくまで努力義務だということでありますけれども、この問題についてです。
 きょうもいろいろな方から、国から言われるまでもなくやっているんだというお話でありましたが、一つは、そもそも社会福祉法人の本旨というのは社会福祉事業であって、公益事業というのは「社会福祉事業に支障がない限り、」とされていました。
 それが、これも一昨日の私の質疑の中で大臣の答弁では、社会福祉法に列挙されている社会福祉事業のほか、地域の幅広い福祉ニーズに対応する公益事業を行う法人として社会福祉法に位置づけられていると。何か、いつの間にか、公益事業もやっても当然だと言わんばかりのことで、非常に違和感を感じるんだという意見が私の事務所にも届いたわけですが、一点、これをどう考えるのか。
 それからもう一点は、努力義務とはいえ、そういうことを法的に位置づけることについての影響や懸念についてお聞かせいただけたらと思います。
○赤松参考人 本当に地域のニーズというのは多様化して、困っている人がふえている、困難を抱えている人がふえている、この現実はもう明らかに我々も直視をする必要があると思っております。
 それにどう対応するかという話で、今回、責務規定ということになったわけですけれども、基本的には、こうした対応、先生おっしゃるように、社会福祉法人の側から申し上げますと、報酬は本来事業に対しての報酬ですから、この報酬に関しては本来事業について使うというのが筋である、そのためのものであるということがまず第一点。
 そして、やはりこういった責務規定を置くということは、この社会福祉のニーズに対して、社会福祉法人がこれを公にかわってやりなさい、社会福祉法人に肩がわりをさせるんだという形をどうしてもつくり出してしまう、そういう仕組みだということが一点。
 そして最後に、結果的にそのことが、本来、公で対応する必要のある、対応するべきであるそうした新しいニーズに対する制度、これをつくり上げることの道を阻むことになるんだというふうに考えておりますので、私どもは、この社会貢献の責務規定そのものが不要なんだというふうに思っております。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 次も赤松参考人と、あと茨木参考人にお伺いしたいと思います。
 社会福祉充実残額の算出について、一昨日の委員会では、事業の内容、規模、さまざまなので、そういった運営の実態をきちんと反映させた形で基準をつくってまいりたいという答弁でありました。しかし、千差万別の事業所の実態をどこまで反映させることができるのか、そして、一たびできた基準で一律に線引きをされるということになると、事業所の運営にも大変支障があるのではないかと私は懸念を持つわけですが、この点、残額の算出のあり方、意見があればお聞かせいただきたいと思います。
○赤松参考人 御質問ありがとうございます。赤松です。
 そもそも、実態を把握するための基準をつくるんだというところが私は出発点として逆だというふうに思っておりまして、実態をまず把握してから法改正の必要性を確かめるべきだというふうに考えておりますので、そういう意味では、まず前提として、実態把握をするために法改正を行うという、このことそのものが立法事実がないことを証明しているんだというふうに考えている点が一点。
 それから、やはり社会福祉法人も規模によって経営実態も相当違いますので、先生おっしゃるように、一律の基準をつくるというのはかなり困難じゃないかというふうに考えております。
 したがいまして、基準をつくるに当たっても、基準をつくるためにも、先ほどから申し上げている、今の本当にやっている経営の実態の調査、公に行政による調査が基本にないと、基準づくりにも、本当にいい基準ができないというふうに考えております。
○茨木参考人 先ほど来の話の中で、社会福祉充実残額という今回ネーミングになったわけですけれども、実際に社会福祉充実残額なるものが残るのか残らないのか、それもわからないという議論の中で、それを使って地域公益活動をやりなさいという非常にむちゃな議論がされているというふうに思っております。
 そういう点でいうと、社会福祉法人は、社会福祉事業を行うための報酬単価なり公定価格なりを得て、それを本体の事業のために使っているわけですから、当然、その残額なるものは、先ほども言いましたが、将来の社会福祉事業であったり、利用者さんのために、労働者の処遇のために使うのが本旨であって、社会福祉充実残額という概念そのものが私はおかしいというふうに思っております。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 次も、赤松参考人、茨木参考人、お二人にお聞きしたいと思います。
 そもそも、実態として、今もありましたけれども、社会福祉充実残額が生じるような経営、財務状況なのかということで、人手不足、労働者の処遇という点でも、また利用者の暮らしや人権を守るという点でも、本当にぎりぎりのところで踏ん張っておられると思うんですね。
 先日、私の部屋にある方が、重度の障害を持つ娘さんを預けておられる方が施設のことで訴えられていまして、お風呂も週に三日ほどだ、外出も月に一回、二時間ほどだ、これが本当に人間らしい生活と呼べるんでしょうかという訴えでありました。
 今の報酬のあり方でも決して十分ではないと思うわけですが、そうした利用者の実態や労働者の実態も含めて、少しそういう御意見があればお聞かせいただきたいと思っています。
○赤松参考人 報酬の低さ、水準の不十分さに関しては先ほども指摘をさせていただいたところですが、本当に、如実にあらわれるのは、支援職員の給与水準、これと全産業との比較での非常に極めて低い水準だということであります。
 報酬の水準が問題だということになると、一方で、議論としては、それは報酬の水準の問題ではなくて労使の問題だから、労使で解決するべき議論じゃないかというような御意見をいただくことがあるんですが、事業の原資である報酬そのものが十分でない中で、労使で解決しようがないことがいっぱいあるというのがまず一点であります。
 それから、報酬が低いから、いろいろな加算制度をつくることで、報酬はこれでいけるんじゃないか、こういった御議論もあるわけですが、私は、やはりこれは基本報酬を抜本的に見直すべきだというふうに考えております。
 加算というのは、一つ一つ要件を設定して、これをとることで加算が加わる、加わるということになりますが、事務量がどんどんふえていくということとあわせて、そもそも加算方式というのが、ある意味の成果主義、こういうことを達成したから御褒美として加算を上げるよという発想なわけでありますね。
 しかし、こういう社会福祉の分野で、人の命やあるいは健康やらそういったものを預かっている我々としては、そういった成果主義の発想をこういった分野に持ち込むということに非常な違和感を感じております。そういった加算主義ではなくて、報酬本体を抜本的に引き上げること、このことが今本当に必要なんだというふうに思っております。
 以上です。
○茨木参考人 そもそも報酬単価がどういう水準で決定をされているのか、その辺が非常にわからない、不透明であるということがまず問題だというふうに思います。
 今回、報酬改定をされましたが、報酬単価の設定に当たっては経営実態調査に基づいて決まる、そういう仕組みなわけですね。
 こういう数字があります。これは厚労省の通所介護のデータですが、社会福祉法人の収支差率が九・九%、営利法人が一二・九%です。経営実態調査は営利法人もカウントして決めますから、その分、収支差率は高くなるんですね。ところが、実際は、社会福祉法人はそんなに収支差率は高くない。私の組織の同友会でも、収支差率は本当に低いものです。
 そういう点では、必要なサービス水準、必要な人件費の水準がちゃんと算定されて、それで報酬単価がちゃんと決定されているのか、そこの問題を明らかにしない限り、何か恣意的に報酬単価を上げ下げするだけでこれは済む問題ではないというふうに思っております。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 菊池参考人にお伺いしたいと思います。
 大阪での実践は、お話にもありましたように、全国でも同様の事業が進められるなど手本にもなっておりまして、私もきょうお伺いしまして、社会福祉法人の自主的な取り組みとして本当に貴重な努力なんだろうというふうにお聞きしました。
 全社協、社会福祉法人全国社会福祉協議会の政策委員会がその実績をまとめられたものを読ませていただきました。実践事例集ですね。
 今後の課題ということで書かれているんですが、一つは埼玉で、「制度の狭間にある方に寄り添い、支援をしていく役割を担っている。しかし、制度の穴を埋め続けるのではなく、そもそも制度やその運用が不十分なために、サービスを受けられずに困っている人がいるという現実に対して声をあげる必要がある。」と指摘をしております。
 大阪の事例の中でも、「「制度の狭間」や支援を必要とする人びとの「声なき声」をそのままにせず、調査・研究・分析し、政策提言へとつなげていくことが求められている。」「地方から国の制度や社会のあり方を変えていくダイナミックな事業展開が期待できる。」と記されております。
 はざまをはざまのままにしておくのではなくて、制度化していく、公的な支援を強めていく、そのことでこういった社会福祉法人の努力がさらに豊かになるというふうに私は考えるんですが、いかがでしょうか。
○菊池参考人 先ほどの御質問ともちょっと重なるところがあろうかと思いますけれども、この取り組みについては、私どもには一定の、ある覚悟といいますか思いがあると申し上げました。
 今、実は、埼玉、東京、神奈川、大阪と、ずっとこの件に関しての連絡会を持っておりまして、絶えず情報交換をして、それでお互いに刺激を与え合って次を目指していくような状況ができておるわけですけれども、その中でもいつもそういったお話が議論の中に出てまいります。
 先ほども申し上げましたように、私どもは決して、いつまでもその制度と制度のはざまを放置しておくのは必ずしもいいことだとは思っておりません。ただ、それが制度化されるまでの間、では誰がやるのかという話になってきたときに、それは多分我々しかいないのではないかという自負を持っております。
 そういう意味で、これも先ほど申し上げた話ですが、これまでも、社会福祉法人、それからもっとさかのぼれば慈善事業家と言われたとき、社会事業家と言われた時代もございましたが、そういったときも、先達が一生懸命、社会に目を向けて、そういった生活課題を解決していった後に制度ができ上がった歴史がある。それは多分今もそうですし、今後も同じことの繰り返しになるのではないかなということを痛切に思っております。
 そういう意味では、我々仲間と一緒に取り組むことが早く制度化されることによって、その方たちが救われる社会が来ればいいなと。ただし、制度になれば、またかたくななものになってしまわざるを得ない、またすき間が生まれる、それの繰り返しだろうなというふうに感じております。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 最後に、茨木参考人にお聞きしたいと思います。
 今の話とも関連しますが、既に、国から言われるまでもなくそういう事業をやっている、しかし、そういうことを法律で縛ってしまうということで、私は取り組みの性格が変わってしまうんじゃないかという懸念もあるわけであります。
 その点について、これからの社会福祉法人に求められていることとあわせてお答えいただけたらと思っております。
○茨木参考人 ありがとうございます。
 今回、社会福祉法人にスポットが当たった制度改革になっていますが、私は、やはり本来的には、社会福祉事業がどうあるべきかという議論がもっとされなければならないというふうに思っています。その中で、社会福祉法人の役割はということをきっちりと議論することが必要ではないかというふうに思っています。
 最初に述べさせていただきましたように、私たちの仕事は、憲法二十五条、生存権に基づいて、利用者の皆さん、国民の皆さんの人権と暮らしを守る、支援する、それが私たちの仕事の本旨です。ですから、ここまでが本体事業で、ここからが地域公益ですよ、ここからが社会貢献ですよという分け隔てができない今の国民の皆さんの暮らしの実態があるというふうに思っています。そういう意味では、社会福祉法人はその先頭に立って、公益性、非営利性を徹底しながら、私たちは事業を進めていかなければならないというふうに考えております。
 私は、きょう一人でここに立たせてもらっていますが、多くの現場で働いている労働者の皆さん、それから保育園の子供たち、障害の施設、作業所の皆さん、高齢者の皆さんが私の後押しをしていただいているというふうに思っております。
 ぜひ、拙速な議論はやめて、今回の社会福祉法人改革法案については十分な審議をして、納得できるまで話を進めていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 時間の関係で磯参考人には質問できなかったことをお許しください。
 以上で終わります。ありがとうございました。