国会論戦・提案

2015年07月08日

社会福祉法改定案を批判

 

行政の肩代わり招く

社会福祉法改定案 堀内議員が批判

 堀内照文議員は8日の衆院厚生労働委員会で、社会福祉法の改定案について、行政が責任をもつべき福祉事業を社会福祉法人に肩代わりさせるもので、本来の福祉事業の後退を招くと批判しました。

 堀内氏は、厚労省が都道府県・市の担当者に「地域における公益的な取組」の実施を社会福祉法人に促すよう通知を出していることにふれ、「国会で審議もしていない。なぜこんな通知が出されるのか」と批判しました。

 法案で社会福祉法人に地域貢献活動を求める論拠としている「内部留保」について、堀内氏が、厚労省が委託した研究報告でも「具体的に示している文献は見当たらなかった」としていることを示し、定義がないと迫ると、厚労省の鈴木俊彦社会援護局長は「甚だ不十分なもの」と認めざるをえませんでした。

 法案は、純資産から必要経費を引いた「社会福祉充実残額」を算出し、社会貢献事業を課すとともに、「残額」が生じない法人にも無料・低額の福祉サービスを課そうとしています。

 堀内氏は「社会福祉事業で得た報酬を他の事業に回すことになり、報酬の実質的減額、本来事業の後退になる」と強調。「福祉の世界に契約や市場原理を持ち込んで福祉がカバーする範囲を狭めておきながら、そこからこぼれたものを社会福祉法人の慈善事業に肩代わりさせようというのが、今度の法案だ」と批判しました。

2015年7月10日(金)しんぶん赤旗より

 

 

◆議事録 2015年7月8日衆議院厚生労働委員会

○堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。
 そもそも社会福祉事業は、公定価格で報酬単価が決められており、余裕など生まれるはずはありません。
 本法案は、本来国や行政が責任を持つべき福祉の制度の公的な支えを社会福祉法人の慈善事業に置きかえようというものであり、退職手当共済の公費補助の削減とも相まって、関係者、国民の中に怒りと不安が広がっております。
 私の事務所にも、きょう持ってまいりましたが、この数日間だけでもファクス、郵送等で五百通近く、緊急要請ということで、多分皆さんのところにも届いていると思うんですが、一言欄もびっしり書かれているわけであります。福祉の公的責任を後退させるものだとか、施設経営が立ち行かなくなるとか、ただでさえ深刻な人手不足に拍車がかかると。
 きょうも、傍聴人もたくさんおいででございます。そういう中での質疑だということを述べて、幾つか質問したいと思います。
 初めに、四月十七日付、社会・援護局福祉基盤課長名で、各都道府県や市の担当者宛てに「社会福祉法人の「地域における公益的な取組」について」という通知が出されていると思います。内容について、趣旨を簡潔に述べていただきたいと思います。
○鈴木政府参考人 御指摘の通知は、社会福祉法人が、社会福祉事業の中心的な担い手としての役割を果たすということのほか、営利法人などの他の事業主体では対応できない地域の幅広い福祉ニーズに対応する法人である、こういったふうに位置づけられているということを踏まえまして、所轄庁に対して、地域における公益的な取り組みの積極的な実施を所管する社会福祉法人に対して促すように依頼した、これが内容でございます。
○堀内(照)委員 文書の中では、規制改革実施計画も挙げまして、一定の事業規模を超える法人に対して、法令等での義務づけに先駆けて社会貢献活動の実施を要請するとか、法整備を待つことなく、社会福祉法人の本旨に基づき果たすべき社会的使命として云々かんぬんということで、今回の法案の中身を先取りするようなことも既に通知で出されている。
 国会で審議もしていないのになぜこんな通知が出されるのか、ちょっと大臣にこれはお答えいただきたいと思うんです。
○塩崎国務大臣 社会福祉法人におきましては、地域における公益的な取り組みについて、従来から、法人の規模とか経営実態に即して自主的に実施をされているというふうに理解をしております。
 今般の改革の背景にございます、福祉ニーズの多様化、複雑化に伴い、営利法人など他の事業主体では対応困難な福祉ニーズに対応する必要性が高まっていることを踏まえると、現行の法体系のもとでも、地域における公益的な取り組みについて、社会福祉法人の本旨に即して積極的に取り組むことが求められていると考えられておりまして、今回の通知においては、その自主的な実施を促したものだというふうに思っております。
○堀内(照)委員 本当に、だったら法改正は要らないわけですし、それから、通知の中では、閣議決定された法案の二十四条二項まで挙げて、やっているわけなんですよ。これは本当に国会軽視も甚だしいと言わなければならないと思います。
 内部留保の明確化ということがここでうたわれて、福祉サービスへの再投下、社会貢献へ活用せいということでありますが、そもそも、社会福祉法人の内部留保というものについて明確な定義づけというのができるんでしょうか。
○鈴木政府参考人 まさに今御指摘ございましたように、現行の法制のもとにおいては、社会福祉法人の内部留保について、それがどういった内容のものであるかという定義は置かれていなかったところでございます。
 そこで、今回の法案につきましては、社会福祉法人が多額の内部留保をある意味抱え込んでいるというような御指摘もあって、これに対して、きちんと社会福祉法人自身が自分のところの内部留保がどのぐらいあるのかということを説明できる手だてが法制上なかったわけでございますので、これをきちんと明らかにする必要があるだろう、そういう意味で、社会福祉法人が国民に対する説明責任を果たすということにもつながるだろうということで法整備をいたしたわけでございます。
 今回の法案の中では、まず、内部留保そのものにつきましては、貸借対照表上の純資産の額ということで、これをいわゆる一番広い内部留保と捉えまして、それから、たびたび御議論いただいておりますように、社会福祉法人が現在の事業に必要な財産額を控除いたしまして、ある意味、余裕財産ということで語られておりましたけれども、法律上は社会福祉充実残額ということで、これを新規事業への再投下可能な財産額と捉えて、社会福祉事業等の充実に再投下するルールをまた法律上も明らかにしたということでございます。
○堀内(照)委員 今の話はちょっとおかしいと思うんですね。今回の社会福祉法人改革の議論の発端は、内部留保の大キャンペーンだった。
 きょうも議論がありましたけれども、二〇一三年、厚労省が委託した明治安田生活福祉研究所の報告があるわけです。今、法制の中では確かにないとおっしゃったけれども、法制だけじゃないんですよ、ないのは。ここの報告でも、これまでの内部留保の必要額や算出方法について具体的に示している文献は見当たらなかった、本調査研究では、過去の文献にはない新たな算式や用語、概念を設定せざるを得なかった、データの制約、外部分析の限界などから一部に精緻さを欠いたところがあるというのがこの報告です。
 それから、昨年七月の社会福祉法人の在り方等に関する検討会の報告書でも、「そもそも内部留保を蓄積しているといっても他の社会福祉事業に投資されている部分は既に活用されており、残りについても将来の施設の建て替え費用として合理的に説明可能な部分が多いことなど、必ずしも内部留保の額だけで一律には論じられない」としているわけですね。
 だから、法案には内部留保なんという言葉はあるんですか。それから、ポンチ絵、説明資料なんかでもいわゆる内部留保ということしか表現されないわけで、明確に内部留保と言えないから、いろいろ、今答弁があったようなことで、今回は社会福祉充実残額をいわゆる内部留保の中から導き出すということになっているんじゃないんですか。
○鈴木政府参考人 まさに今御指摘いただいたように、一般的に、定義をはっきりさせないまま、内部留保が多いとか少ないとかいった御議論があって、社会福祉法人の運営に対していろいろな議論が起きてきたということでございますので、これはやはり制度としてしっかり、いわゆる内部留保と言われていたものがどういう定義内容のものであるのか、それをきちんとした上において、法人が事業を継続していく上で本当に必要な財産の額と、それからそれ以外の額、これがきちんと明らかになるようにルール立てをしなければならないだろう、これが今回の改正法の問題意識でございます。
 今御指摘のありました途中段階で民間の研究所が出しました額、これは、特別養護老人ホーム一施設当たり三・一億円ですとか一・六億円とか、いろいろなことが言われておりましたけれども、まさに今御指摘のありました研究所のコメントにもありますように、これは甚だ不十分なものでございます。
 今回の法案化に当たりましては、こういったものにつきまして、きちんと専門家に集まっていただき、現場の方々にも集まっていただいて相当何回も議論いたしまして、そういった不十分なことがないように、本当に社会福祉法人が事業継続に必要な額とそれ以外の額が明らかにできるような基準というものを法制上つくろうということで、今御提案いたしております法律の形で出させていただいたということでございますので、これまでいろいろな不十分な形で御議論のあったものにつきまして、法律が成立をいたしましたらば、きちんとしたデータの形で客観的にこれが議論できるようになるだろうというふうに考えているところでございます。
○堀内(照)委員 ですから、これは内部留保と呼んではいけないと思うんです。いわゆると言うならまだわかる話であって。
 社会福祉充実残額というのをどのように算出するのかということは、通告はしていましたけれども、いろいろと先ほども答弁が、この間もありました。簡単に言えば、純資産から必要な財産、経費を引いて算出をするんだと。ただ、どれだけのものが必要経費と認められるのか、控除の対象となるのか、これもまだ未定なんだと。
 これ自体もとんでもないと私は思うわけですけれども、建てかえや改修の費用、それから手元の流動資金、これは、事業所の規模や内容、特に重度の障害の方を抱えておられる事業所では利用を休まれる方が多いと利用料がやはり入らないわけですので、本当に千差万別だと思うんですね。そういったこと全ての実情を反映した基準や計算式ということは本当にできるんでしょうか。
○鈴木政府参考人 まさに今回、いわゆる内部留保というものから事業継続に必要な額をきちんと控除する、この基準をしっかりつくってまいらなければならないと思っております。その中で、今御指摘のありましたように、社会福祉法人、事業の内容、規模、さまざまでございますので、そういった運営の実態をきちんと反映した形で基準をつくってまいりたいと思っております。
 これは、法律段階では、先ほど御答弁申し上げましたように、現在の事業を継続するのに必要な額ということで、法規定としては必要十分な規範性を持っておりますので、あとは、かなり学術的な面も含めまして、会計技術的に、あるいは専門家の目でも見ていただいて、きちんと詰めていかなければならない問題である。したがいまして、この法律の成立を受けて、施行までの間に、今御指摘のあった実態をきちんと踏まえた基準となるように、これは専門家も含めて十分議論をした上で基準を策定してまいりたいと思います。
○堀内(照)委員 その実態が踏まえ切れるのかという懸念があるわけです。基準ができて、それで一律に線が引かれるということになれば、乱暴なやり方だと言わなければなりません。
 法案では、社会福祉充実残額が生じれば、社会福祉充実計画をつくり、所轄庁の承認を得て事業を行わなければなりません。この残額なんですが、理論的に言えば、極端な話、一円でも残額が生じたら計画というのは立てなければならない、事業を行わなければならないんでしょうか。
○鈴木政府参考人 現在御提案を申し上げております法律規定上の理解を申し上げれば、今御指摘のあったとおりでございまして、社会福祉充実残額が一円でもあれば、社会福祉充実計画は策定をしなければならないということでございます。
 そうしますと、そんな僅少な残額があったものについて、計画を立ててこれはどうするんだというのが御関心の点だと思いますけれども、一方で、充実残額が僅少な法人においても、充実計画の内容につきましては無理のない内容で策定できるように、これは、法律上一概にこういった内容でなければならないといったことまで決めているわけではございませんので、当然、充実残額の状況に応じて、法人が無理がない再投下計画をつくるということで法律をつくっているわけでございます。
○堀内(照)委員 これは、先ほどの答弁の中でも、今すぐ実施するものでなくても、実際には後年実施の計画のものでもいいんだとか、それから費用のかからない事業もあるんだという説明もあるわけですけれども、しかし、今、多くの社会福祉法人は、経営的にも、そしてマンパワーという点でも本当にぎりぎりのところで頑張っているわけで、計画を立てる事務作業だけでも大変なわけなんですね。そうした実情を本当にわかっているのかなと思うわけであります。
 それから、充実計画はおおよそ五年程度の中期的なものを見込んでいるとお聞きしました。そうすれば、例えば、計画を立て事業が始まる、その翌年とか翌々年、途中で今度は残額が生じませんでした、そうなったらその事業はどうなるんでしょうか。
○鈴木政府参考人 法律の規定上は、社会福祉充実残額に変更が生じまして、充実計画に位置づけられた事業の継続が困難な場合、これは、所轄庁の承認をもって計画の変更、終了をすることができるということになっております。
 実際に、社会福祉充実計画につきましては、当然、策定するに当たりまして、事業の安定性とか継続性、こういったものも考慮しながら、今御指摘がありましたように、中長期的な観点から実施事業を検討するということになっております。
 それから、その中では、特に地域におきまして、複数の社会福祉法人あるいは他の事業主体と連携して事業を行うということも当然検討の視野に入ってくるわけでございまして、こういったことを含めまして、持続的な取り組みに配慮して計画策定を行うということであろうというふうに承知をいたしております。
 特に、計画の策定に当たりましては、地域住民の意見を聞くということにいたしておりますし、それから所轄庁の承認という行為もかんでおるわけでございまして、事業の継続性という観点からは、そうした仕組みをきちんと働かせることによりまして、計画に変更が生じた場合にも、直ちに非常に困難な、懸念のある事態が起きないようにしていくということで法律の仕組みを用意しているつもりでございます。
○堀内(照)委員 安定性を考慮するとかいろいろ言われましたけれども、結局、そうなると、事業所は、目の前で困った人を放っておけずに、自腹を切ってでも事業を継続せざるを得なくなるか、それか、本当にもう無理だったら、打ち切って利用者が犠牲になるか。それから、他事業所との連携とおっしゃいましたけれども、そうなったら、ほかの法人に迷惑がかかるわけですよね。ほかの法人への負担が重くなるんじゃないか。
 これは、幾らその残額があるからといっても、そういう事業を法律で義務づけるということになると、本当に事業所に大変な負担を強いる、そして、進めようという事業も、本当に安定した事業としてできるんだろうかというふうにやはり思うわけであります。
 社会福祉充実計画を策定する際、地域協議会による論議や所轄庁での承認が必要になりますけれども、こうしたことが事業所の自主性を損なうことにはならないのかという懸念もあります。
 私の部屋に先日、障害のお子さんをお持ちの親御さんが見えられまして、その方は、奥さんが亡くなられて、とりわけ自分が亡くなった後、子供がどうなるかということが心配だ、その点ではグループホームの建設をと思うわけだが、この法案ができれば、一生懸命集めた寄附金やバザーなどの資金がいわゆる内部留保とみなされてしまう、施設建設用の費用を集めても、一旦いわゆる内部留保としてくくられてしまうと。
 幾ら、その後、社会福祉事業等投資額に使うのが優先されるんだといっても、地域協議会での議論を経て、寄附などが目的外に使用される可能性というのは排除されるんでしょうか。
○鈴木政府参考人 今回の法律の仕組みは、まさに今、懸念があるということで御指摘いただいたような事例に対して、きちんと制度的な保障を行うというものであるというふうに考えております。
 具体的には、今回の法案にありますように、事業継続に必要な額がルール化されて客観的に出るというルールがない、その結果、さらに新しい事業をするために留保していた金額というものについても説明がつかない。これは、ある意味で、今申し上げたのは現状でございますけれども、それに対しまして、法人が今の事業をきちんと継続していくために必要な額、そして、まさに御指摘がありました例えば新しいグループホームの建設も含めまして、社会福祉の充実を法人として図っていくために必要な財産の額、こういうものがきちんと計画の中で特定をされて、これが逆に地域住民の方にも説明ができるようになる、これが今回の法律の効果だというふうに思っております。
 そういうものをきちんと地域の理解を得ながら策定していく、これは法人のひとりよがりではいけませんので、そういうものを地域の理解を得て策定していただく、そのための手続として地域協議会があるわけでございまして、地域協議会がそういった法人としての福祉の発展に阻害になるといったようなことはないものと考えております。
○堀内(照)委員 そうしますと、地域のニーズがこうあるんだということで、必ずしもグループホーム以外にも、これだけ寄附金が集まったんだったら、こういう事業にも使ってくれよということにもなり得るということじゃないですか、それは。違うんですか。
○鈴木政府参考人 議論としておっしゃるようなことが全くないかというと、そういうことはないと思いますけれども、しかし、基本的に、例えば今の御提示の事例でいきますと、寄附した方の発意といいますか、意思というものはやはり尊重されるべきでありまして、それとともに、法人がきちんと地域に対して説明もするわけでございます。その中で、地域のニーズと寄附者の発意というものが全く合わないといった事例が果たしてどの程度あるのかということは実際的に考えていかなければならないと思います。
 やはり地域においてきちんと一定の必要性があるということで、ある意味での公的な器としての社会福祉法人に役立ててほしいということで寄附をいただくわけでございますので、そうしたプロセスについてきちんと地域で説明を展開していただく、地域協議会というのはその一つのツールでございますけれども、そういうことをしていただければ、今先生がおっしゃったような御懸念のような事態というのはないのではないかというふうに考えております。
○堀内(照)委員 寄附者の発意や自主性というのが損なわれる、これは本当に絶対にあってはならないということを指摘しておきたいと思います。
 この法案は、社会福祉充実残額が生じた事業所にだけ社会貢献を求めているのではありません。二十四条二項にあるように、全ての社会福祉法人に努力義務として求めているわけであります。
 それで、ちょっと先ほど飛ばした質問に戻るんですけれども、大臣に伺いたいと思います。
 先ほどもちょっと議論しました、内部留保があるんだ、余裕があるなら社会貢献せよというところから始まった今回の問題でありますけれども、今見てきたように、内部留保といっても、実際には企業のような内部留保ではないわけであります。そこで、今回は、社会福祉充実残額という新たな概念までつくり出してやるわけですが、その上、そういった残額もない法人にまで社会貢献を課そうと。
 内部留保論から始まった議論でありますけれども、前提が違ったものになっていると私は思うわけです。それにもかかわらず、社会貢献せよという結論だけは変わらずにある。これは本当に道理がないと思うわけでありますけれども、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 社会福祉法人は、社会福祉法に列挙をされております社会福祉事業のほかに、地域の幅広い福祉ニーズに対応する公益事業を行う法人として社会福祉法に位置づけられている法人であって、今回、公益性、非営利性を備えた法人本来のあり方を徹底する観点から、この本旨を明確化して、責務として位置づけるということになったわけでございます。
 今般の見直しにおいては、全ての社会福祉法人について、地域における公益的な取り組み、日常生活あるいは社会生活上の支援を必要とする者に対して無料または低額の料金により福祉サービスを提供することでありますが、この公益的な取り組みの実施を責務として位置づけた上で、再投下可能な財産を保有する法人に対しては、当該財産を計画的に福祉サービスに再投下する仕組み、いわゆる社会福祉充実計画、この中でこうした地域における公益的な取り組みを促すこととし、なおかつ、再投下可能な財産のない法人については、追加的な費用が生じない取り組み、例えば居場所づくりであるとか福祉に関する情報提供であるとか、こういった費用が生じない取り組みを含めて、地域における公益的な取り組みを行うことを責務として課して、その実績などの公表を求めることとしているところでございます。
○堀内(照)委員 法的に義務づけるものではないとはいえ、積極的に努めなければならないと、かなり強い努力義務が課されています。一方で、財務状況や社会貢献の事業の実施状況も公表されるわけで、社会的な目にさらされれば、やはりそうした事業の実施というのが迫られる、そういう圧力にもなるということもあると思うんですね。
 それで、今、居場所づくりとか情報提供とか、そういうものもあるんだということをおっしゃられたわけでありますけれども、そういう残額のない法人がこういう事業をやろうと思ったら、本当に困難があると思うんです。
 そういう居場所づくりや情報提供なら費用がかからないだろうということでありますが、しかし、では、地域促進、交流促進のために場を提供しますといっても、場所だけ貸すというわけにはいかないと思うんです。やはりそこに人をつけなければなりません。情報提供も、いろいろそういうものをつくる人手がやはり要るわけです。そうした事業にかかる人件費の費用負担というのはどうなるんでしょうか。これは結局、私は、施設の持ち出しになるんじゃないかと。
 社会福祉法六十一条一項では、国などが社会福祉法人に財政的な援助を求めないとしているわけでありまして、本来業務に従事するために基準があり配置をされている人員を、他の事業、しかも法律で国が努力義務として課す事業で使うということは、この六十一条一項に抵触するんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○鈴木政府参考人 まず、大臣からも御答弁を申し上げましたように、この地域公益活動につきましては、基本的に義務ではなくて責務でございます。したがって、法律上の概念としては努力義務であります。したがって、その帰結といたしまして、それは法人の事業状況、財務状況に合ったものを努力として実施していただければいいということでございまして、とにかくこういうものをやれというような義務ではございません。まず、前提としてそういうことがございます。
 その上で、今先生御指摘のように、例えば居場所づくりあるいは情報提供といっても、事業そのものにはお金はかからないけれども、それに附帯する、例えば人件費ですとか多少の経費はかかるじゃないかという御指摘だと思います。
 それは論理的に言えばおっしゃるとおりだと思いますけれども、しかし、そういうものにつきましては、基本的にどの法人につきましても、情報提供の事業、あるいは地域に自分の施設を開放しての居場所づくりというのは、努力の一環としてやっていらっしゃると思います。そういうものをきちんと地域住民に対して説明できる、こういった手だてを今回の法律で位置づけたということでもございますし、繰り返しになりますが、それはあくまでも法人の体制あるいは財務状況に合わせて適切な実行手段を選択いただければいいということでもありまして、義務ではございません。
 したがいまして、今御指摘のありました社会福祉法の六十一条一項一号の原則につきましても、これは基本的に国が財政の肩がわりを今回の仕組みによって求めるものではございません。先ほども御答弁いたしましたけれども、行政として、支援が必要とされる方々に対していろいろな支援の制度化あるいは事業化を適切に果たしていく、こういった責任についてはいささかの変更もないと考えておりますので、そういった面におきましても、六十一条一項一号との抵触問題というのは生じないものというふうに考えております。
○堀内(照)委員 法人が自主的にやっているものと、今度は法的に根拠を持つ事業になるということがやはり大きな違いだと思うんです。
 費用がかかる事業ともなれば、なおのこと、ほかの社会福祉事業で得た報酬を他の事業に回すということにもなって、これは明らかに報酬の実質的減額にもなるし、本来の社会福祉事業の後退にもなると思います。
 きょうは最後に、こういった法案の中身を先取りするような事業が幾つかの県で進められております。埼玉では、彩の国あんしんセーフティネット事業ということで、事業開始から半年たったことし三月十日現在、二百九件の相談支援を行って、百三十件で実際に経済的援助、現物給付が行われているといいます。相談の中身は、稼働世帯だけれども失業して生活に困窮している、そういった方からの相談が多い。制度につなぐまでの間の支援を行っている。
 社会福祉法人が自主的に制度のはざまを埋める活動を行い、実際に困っている人を支援すること自体は、私は、積極的に意義があると思うんですが、二つ問題があると思います。一つは、本来行政が取り組むべき制度の活用が、社会福祉法人の慈善事業に取ってかわられている。二つは、その費用負担が社会福祉法人のものであるということ。
 主な相談経路というのを見ますと、七十四件が行政から、七十八件が市町村の社協からと断トツなんです。百三十件の現物給付というのも、参加する社会福祉法人が拠出する基金から十万円を限度とした現物支給が行われている。
 本来は、生活福祉資金やそのつなぎ融資など、公的な制度というのがあるはずです。そういうものを活用できるにもかかわらず、本来そこで対応すべき行政が社会福祉法人に丸投げしているという格好であります。
 これはまだ社会福祉法人の自主的な取り組みの範囲ですが、今度の法案が通ると、こういうことが法律で規定された事業として始まるのではないかと私は危惧を覚えるわけであります。
 目の前の困った人を救う、制度のはざまになっている事例に取り組むというのは、これまでも、今ありましたように、社会福祉法人が自主的に進めてきたところであります。そうやって、制度のないところから運動で新たな制度をつくらせてきたという歴史があるわけです。
 大臣にお聞きしたいんですが、そのはざまを今度は残額を活用して無料、低額で社会福祉法人に担わせる、そういうことを法定していく。これでは、はざまのニーズについては恒久的に社会福祉法人の慈善事業に肩がわりさせるということになるのではないか、新たな制度をつくり、公的に支えていく道を閉ざすことになるのではないかと思うわけです。ましてや、埼玉の例のように、今ある制度、公的な制度の分まで肩がわりさせるなんということになれば、それこそ国の責任放棄だと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 全て行政がやるという国柄では私はないと思います。
 今日、社会の変化、家族の変容に伴って地域の助け合い機能が縮小している中で、多様化、複雑化する福祉ニーズに対応していくためには、国や地方公共団体による福祉サービスや支援の制度化等に加えて、社会福祉法人、NPO、ボランティア等さまざまな民間主体が、国や地方公共団体と協働しながら、いわゆる公益というものを皆で定義しながら、それぞれの役割に応じたきめ細かな活動を行っていくということが極めて重要だというふうに思います。
 社会福祉法人は、社会福祉法に列挙されている社会福祉事業のほかに、地域の幅広い福祉ニーズに対応する公益事業を行う法人として社会福祉法に位置づけられている法人であって、先ほども申し上げましたけれども、今回新たに規定をいたしました社会福祉法人の責務は、こうした社会福祉法人の本旨を明確化したものであって、もとより福祉ニーズに対する公的な責任を転嫁するものでは決してないというふうに考えるところでございます。
○堀内(照)委員 もう終わりますけれども、あり方検討会の報告では、社会福祉法人の役割について、制度のはざまのニーズ、市場原理では満たされないニーズがあるとか、政府の失敗の補完機能、市場の失敗の補完機能なんという言葉も出てくるわけです。
 この間、介護保険や障害者施策が典型ですけれども、福祉の世界に契約や市場原理を持ち込んで福祉がカバーする範囲を狭めておきながら、そこからこぼれたものを社会福祉法人の慈善事業に肩がわりさせようというのが今度の法案だ。私は言語道断だと厳しく指摘をして、質問を終わります。