国会論戦・提案

派遣法改悪案 正社員化の保証なし

派遣への置き換え進む

派遣法改悪案 堀内議員批判 正社員化 保証なし

 日本共産党の堀内照文議員は19日の衆院厚生労働委員会で、労働者派遣法改悪案について安倍晋三首相に質問し、「正社員から派遣労働者に置き換える『常用代替』が進む。廃案にするしかない」と主張しました。

 堀内氏は、「現行法では業務単位の期間制限があり、そこでその後雇用される労働者は必ず直接雇用でなければならない」と指摘。ところが改悪案では業務単位の期間制限がなくなるため、「期間制限が過ぎれば必ず直接雇用されなければならない仕組みがなくなる」と強調し、「正社員化どころか生涯派遣に道を開くものだ。そうでないなら根拠を示せ」と迫りました。

 安倍首相は、正社員募集の情報提供など実効性のない「雇用安定措置」を挙げるだけで、「雇用の安定は現行より強化される」と強弁。堀内氏が「必ず直接雇用されるといえるのか」と迫ると、塩崎恭久厚労相は「最終的には雇用主が判断することだ」とのべ、正社員化の保証がないことを認めました。

 堀内氏は、半導体大手ルネサスエレクトロニクスで早期退職に追い込まれた課長級社員が派遣社員として戻ってきている実態を示し、「すでに正社員から派遣への置き換えが進んでいる」と強調。「正社員化の道どころか派遣労働者が増えることは明らかだ。法案に『雇用慣行が損なわれる場合』の再検討規定を盛り込んだのも、それを懸念しているからだ。労働者保護とかけ離れた法案は廃案しかない」とのべました。

2015年6月20日(土)しんぶん赤旗より

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◆議事録 2015年6月19日厚生労働委員会

○堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。
 私は、五月十二日の本会議で、この派遣法の問題について総理に質問をいたしました。そのときの総理の答弁と、本委員会での審議の中で明らかになったことを踏まえて、総理に質問したいと思います。
 本会議で、私は総理に、労働法制をなぜ岩盤規制と呼び、規制緩和の対象とするのか、労働法制とは、本来、人間らしく働ける環境をつくるためにあるのであって、拡充こそすれ、規制打破の対象とはなり得ないではないかと質問をしました。
 総理からは、経済産業構造の変化に応じ、雇用の安定化を図りつつ、働く方々のニーズに対応した働き方を実現する観点から改革の必要があるからだと答弁がありました。本法案についても、その観点から、正社員化の道を開くための派遣法の改正だと説明をされました。
 しかし、本委員会での審議の中で、事業所単位、個人単位での新たな期間制限も、例えば事業所単位では、過半数労働組合等から意見を聴取し、反対があっても、説明さえすれば、期間制限を超えて延長可能です。個人単位も、部署さえかえれば、引き続き派遣労働者としての使用は可能であります。何らこの制限は歯どめがないということが明らかにされてまいりました。
 総理は、それでもなお、本法案が正社員の道を開くためのものだという御認識なんでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 これはまさに、現状と、この法案によって何が改正されるかをぜひ比べていただきたい、このように思います。
 先ほども答弁させていただきましたように、派遣という働き方については、賃金水準が正社員に比べて低い傾向にあり、雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があります。
 このため、今回の改正案では、正社員を希望する方にはその道が開かれるようにするため、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり別の会社等で働き続けられるようにする措置や、計画的な教育訓練を新たに義務づけるなど、派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化することにしています。
 また、派遣先についても、直接雇用の依頼があった派遣労働者に対し労働者の募集に関する情報を提供するなど、新たな義務を課すとともに、キャリアアップ助成金によって正社員化への支援を行うことにしています。
 さらに、一部届け出制となっている労働者派遣事業を全て許可制とし、雇用安定措置を講じない派遣元に対しては厳正な指導等を行い、義務の履行をしっかりと確保していくこととしています。
 派遣期間制限の対象となる労働者を六割から八割に拡大をするわけでありまして、現行制度のままでは、制限なくいつまでも派遣の認められる方が四割いるわけであります。教育訓練を受ける機会もありません。
 正社員への移行を一歩でも前進させるため、これまでなかった仕組みを設け、希望する方の正社員化へ向け、着実に取り組んでいく考えでありまして、そのための法改正であります。
○堀内(照)委員 現状と比べてほしいということでありました。
 では、現行法でどうなっているのかということであります。塩崎大臣にこれはお尋ねしたいと思います。
 現行では、いわゆる一般業務については、業務単位で期間制限がかかっております。一年もしくは最高三年たてば、当該部署では派遣労働者は使えなくなります。そこで働いていた労働者はどうなるかは別にして、その部署で引き続き雇用される労働者は必ず直接雇用でなければならない、これは間違いありませんね。
○塩崎国務大臣 現行法についてのお尋ねでございまして、期間制限の上限に達する派遣で働く方に対して、必ず派遣先が直接雇用を申し込む義務があるわけではないわけで、例えば、派遣で働く方が派遣先での直接雇用を希望しない場合や、派遣の受け入れを停止し、かわりに自社の直接雇用の労働者を配置する場合などがございます。
○堀内(照)委員 ですから、その職場での派遣はだめだということでしょう。直接雇用に必ずなる。その人はどういう身分であれ、直接雇用であるということは間違いないということだと思います。
 現行法では、このように、派遣はあくまで臨時的、一時的雇用に限るということを担保するために、派遣をこれ以上続けてはならないという歯どめがあったわけです。ところが、この業務単位の期間制限をなくし、新たに事業所単位、個人単位に期間制限をかけるというのが本法案ですが、これも先ほど申し上げたとおり、歯どめがなくなります。そうすれば、期間制限が過ぎれば必ず直接雇用されなければならなかった仕組みがなくなります。
 総理、これも法文上、事実の問題としては間違いないと思うんですが、いかがでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 先ほど大臣の方からも答弁をしておりますが、今回の改正案においては、派遣期間が満了した場合、派遣元に対し、正社員になったり別の会社等で働き続けられるようにする雇用安定措置を新たに義務づけることとしております。こうした措置によって、派遣で働く方の雇用の安定は現行より確実に強化されると考えております。
 また、今回の改正案においては、派遣元に対し、計画的な教育訓練等を義務づけることとしておりまして、こうした取り組みによって、働く方の希望に応じた働き方が実現できる環境を整備してまいりたいと思います。
 現行法についての、直接雇用されるという現行法の仕組みがなくなるということの御指摘かもしれませんが、現行法においては、派遣期間満了時において派遣先に雇用が義務づけられているわけではなくて、必ず直接雇用されるという仕組みではないわけであります。
 今回の改正案において、期間制限の見直しに伴い、現行の期間制限を前提とした直接雇用申し込み義務規定を削除することとしておりますが、仮にこの点を指摘しておられるのであれば、これは期間制限違反を防止する観点から設けられている仕組みでありまして、派遣先が期間制限を超えて派遣を受け入れようとするときに、その労働者に直接雇用を申し込む義務を課しているものであります。
○堀内(照)委員 ですから、期間制限を超えればそこでは派遣が使えなくなる、それが直接雇用の契機になっているというのは間違いないわけであります。今いろいろおっしゃいましたけれども、それはあくまで正社員の道につながる可能性があるということであって、必ず直接雇用になる、そういう仕組みということでは示せないわけであります。
 私は、本会議で総理に、今度の法案は文字どおり生涯派遣への道となってしまうじゃないか、そうでないというならその根拠を示していただきたいというふうにお聞きしたんですが、総理からは、法案の中身を繰り返して、「生涯派遣や、正社員から派遣への置きかえを進めるものではありません。」という答弁だけでありまして、根拠は示されなかったと思います。
 改めてお聞きしたいんです。
 本法案は、正社員化どころか生涯派遣に道を開くものにほかならない、そうでないというなら、その根拠を今度こそ明確に示していただきたいと思うんです。
○安倍内閣総理大臣 具体的には、派遣元に対して、派遣期間の満了時に、正社員になったり別の会社等で働き続けられるようにする措置や、計画的な教育訓練等を初めて義務づけるわけであります。また、派遣先においても、派遣で働く方への正社員募集に関する情報提供を新たに義務づけるとともに、正社員として雇用する場合のキャリアアップ助成金の活用等を進めることとしているわけであります。
 さらに、労働者派遣事業について、現在の一部届け出制を全て許可制にする。許可制にする意味については、先ほど答弁の中でお答えをさせていただいたとおりでございまして、また、派遣期間制限の対象となる労働者を六割から八割に拡大するわけでありまして、そうした必要な規制の強化を図ることとしています。
 これらの措置によって、働く方それぞれの選択がしっかりと実現できるような環境を整備していく考えでありまして、正社員から派遣への置きかえや生涯派遣といった指摘は当たらないと考えております。
○堀内(照)委員 義務を課したと言うんですが、その義務さえ果たせば派遣労働をずっと使えるということになるわけですね。ただ、現行法では、先ほど言いましたように、期間制限が来たら派遣労働を使えなくなるんですよね。そこは決定的な違いじゃないですか。
 キャリアアップとか雇用安定措置というのも、今までもいろいろ議論がありました。それを通じて三年ごとにキャリアを見直すんだということも、この委員会でも議論がありました。
 では、三年たったときに必ず直接雇用に結びつくというふうに言い切れるんでしょうか。
○塩崎国務大臣 これは先ほど総理の方からも答弁申し上げましたけれども、今回、雇用安定措置を、いろいろ御批判をいただいていますけれども、これまで、雇用が安定するように措置をするという義務がそもそもなかった、努力義務にしかすぎなかったということで、これを創設すること自体にまず意義を認めなければならないというふうに私たちは思っておって、その上で、四つの措置を義務化するということでやっているわけでございます。
 何度も申し上げますけれども、これは最終的には、我々、まず第一に、派遣労働というのは臨時的、一時的なものであると。だからこそ、できる限り直接雇用になるべきだ、そのお考えはそのとおりだと思います。ただし、それは、御自身があえて選択をして派遣でいかれたいという方は、それは別だ。それが半々におられる。
 もう一つは、やはり最終的には、雇用をするしないの最終判断は雇用主の方がするわけでありまして、我々としては、今回派遣元に雇用安定措置を義務づけるということによって、より派遣の方が、直接雇用を含めて、言ってみれば雇用の質が上がっていくようにするために、さまざまなことをやろう。それを、今までのようにばらばらしないで、全てを許可制のもとで、しっかりと行政の監督のグリップをきかせながら、そういう中で義務を果たしていただこう、こういうことで今回のさまざまな改正提案をさせていただいているということでございます。
○堀内(照)委員 結局、やはり一〇〇%直接雇用に結びつくということは言い切れないんだと思うんです。
 既に製造現場では、本法案の先取りのような、正社員が派遣に置きかわる事態が進んでおります。
 半導体大手ルネサスエレクトロニクス、昨年九月三十日付で三千人余り、ことし一月三十一日付で千八百人、そういう人数を目標に早期退職に追い込んできました。この早期退職者は、再就職を人材派遣会社に頼らざるを得ません。そういう人たちが、これら派遣会社を通じ、再びルネサスで働いている。主任に降格するぞと無理やり早期退職に応募させられた課長級の社員も、派遣社員として戻ってきている。セミナーなんかもやっているんですが、そのセミナーの実態は人材派遣会社の宣伝だった。退職を迫る面談で、こういう会社があるからぜひ来てくれと言われて紹介された会社が実は派遣会社だった、こういうケースもあります。
 結局、この法案で期間制限といっても、現行法のような、派遣が一旦ゼロになる、直接雇用に結びつく、義務づけるような、そういう縛りがない法案が成立すれば、より派遣は使い勝手がいいということになり、正社員から派遣に置きかわる、こういうケースが相次ぐんじゃありませんか。そうならないと言い切れるんでしょうか。
○塩崎国務大臣 いわゆる常用代替ということかというふうに思います。今そういうはしりが既に出ているじゃないかということでございますけれども、私たちは、この法案が御審議をいただいた上で成立をした際には、先ほど申し上げたように、さまざまな義務を派遣元にも課し、派遣先にも課すということで、先ほど雇用安定措置のお話を申し上げました。
 こういうことも今までは、何をやったかということについてはこの間調査をいたしましたけれども、ただ、それは急遽な調査でございましたが、今後は、事業報告の中で、どういう雇用安定措置をとってきたのかということをきちっとインターネット等によって情報提供するように指針の中で明示をするという中で、派遣先についても、今、常用代替が行われるという御懸念をお示しになられましたけれども、そうならないように私たちもやっていきたいというふうに考えておるところでございます。
○堀内(照)委員 結局、一〇〇%直接雇用に結びつくということは全く示されないわけですし、現場では既に正社員から派遣への置きかえが進んでおります。
 本法案が、正社員化への道をつくるどころか、派遣労働者がふえるということになることはもう明らかであります。だからこそ、日本の雇用慣行が損なわれるおそれがある場合、速やかに検討する、こんな規定まで盛り込んだ。
 総理は、私の本会議質問に答えて、この雇用慣行が損なわれるおそれというのは何か、正社員が派遣労働者に置きかわる常用代替が常態化することだと答弁されました。まさに、派遣労働者がふえるということを政府自身が懸念していることの証左じゃありませんか。
 労働者保護とはかけ離れた本法案は廃案しかない。ましてや、職権に次ぐ職権という不正常な委員会運営が続く中での採決を強行するなどというのはもってのほかだと厳しく糾弾をして、質問を終わります。