国会論戦・提案

派遣法改悪案で参考人質疑

 

派遣を大幅に拡大 堀内議員質問 法改悪案で参考人質疑

 衆院厚生労働委員会は28日、労働者派遣法改悪案について参考人質疑を行いました。

 意見陳述で、自由法曹団の鷲見賢一郎弁護士は、現行法で定める「業務単位の期間制限は直接雇用につながるものだ」と指摘。これに対して、改悪案では「過半数労働組合から意見聴取しさえすれば派遣受け入れを永続的に継続できる」と批判しました。改悪案にある「均衡処遇」は格差を容認するものであり、「キャリアアップによる正社員化」についても、条文の規定はないと語りました。

 また、10月1日に施行される「労働契約申し込みみなし制度」の発動を回避するために、政府・厚労省が改悪案の9月1日施行をねらっている問題について、「派遣労働者に対する背信であり、立法政策として間違っている」と批判しました。

 派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は、改悪案について「派遣労働者を正社員化する法案ではなく、不安定な派遣を大幅に拡大するものだ」と語りました。

 質問に立った日本共産党の堀内照文議員は「派遣について労働者のニーズがあるというが、どう考えるか」と聞きました。鷲見氏は「多様な働き方というが、実際は労働者保護がないまま働かされている。改正案は、その流れを加速させるものだ」と指摘。関根氏も、「低賃金、不安定である非正規雇用、派遣を自ら望む人が多いというのはありえない」と答えました。

 堀内氏は、法案の付則で、常用代替が常態化する場合の見直し規定を設けていることについて質問。鷲見氏は「派遣が増え、正社員が派遣に置き換えられる。派遣先にとっては使い勝手のいい法律になっている。リーマン・ショックで起きたような事態を拡大するような法案だ」と語りました。

2015年5月29日(金)しんぶん赤旗より

 

◆議事録 2015年5月28日衆議院厚生労働委員会 参考人質疑

○堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。
 参考人の皆様には、本当にきょうはありがとうございました。私からも幾つか質問させていただきたいと思います。
 初めに、関根参考人と鷲見参考人、お二人にお伺いしたいんです。
 政府は、派遣労働の必要性について、多様な働き方と、労働者側にもニーズがあるというふうに言うわけですが、実際に多くの派遣労働者と接してこられた経験から、こうした考えをどう捉えるのかということであります。
 特に、関根参考人の最初の意見陳述の中で、用意いただいた資料の五ページの「今後どのような働き方を希望するか」という経年での表がありますけれども、これを見て本当になるほどと私は思ったわけです。
 つまり、正社員として今後働きたいという人、または派遣を続けたいという人の割合が、二〇〇一年と二〇〇四年の調査を境にして逆転をしているわけですね。それまでは、正社員として働くことを希望していた方が三割台、派遣を続けたいという人が五割から六割だったのが、二〇〇四年以降は、正社員を希望する人が六割、七割、それから、派遣でいいんだという人は二割台に、逆転している。
 これは、つまり、製造業解禁ということを境に様相ががらっと変わっているということなんだというふうに受けとめたわけですが、これは派遣労働者がニーズがあって選んでいるというよりは、むしろ制度がつくり出したものじゃないかと私は思ったわけです。
 こういったニーズ論についてどう捉えるのかということを、関根参考人、鷲見参考人、お二方にお聞きしたいと思います。
○関根参考人 まず一つ言えることは、不安定な雇用であるとか低賃金、これを望む労働者はいません。したがって、今、非正規雇用の最大の問題点というのはこの二つ、低賃金であり、格差がある、そして非常に不安定な雇用であるということ。そういった意味では、非正規雇用、派遣労働をみずから望むという人が多いということはあり得ないだろうというふうに考えております。
 ここの経年変化でも出ているとおり、どんどん規制緩和される中で派遣労働が拡大して、働く人たちが安定した雇用につきたいけれどもつけないという事態になってきた。そういった意味では、働き方の多様化が広がったというよりは、実際に規制緩和することによって低賃金あるいは不安定雇用で働かせるという働き方が広がって、働く側の選択肢というのは狭められているというような実態にあるというふうに考えております。
○鷲見参考人 多様な働き方とよく言われるんですけれども、多様な働き方を保障するというか大事にすることについて、そう異論はないだろうと思うんです。
 ただ、多様な働き方という理由というか、場合によっては口実のもとに、労働者に対する保護をなくしていく、緩和していくということだと、私はいかがなものかと思うわけであります。
 労働者派遣につきましては、もともとが雇用主と実際に使用する人が違うわけですから、労働災害の問題とか、あるいは職場において正社員と差別されるとか、そういう点での手当てが全然ないんじゃないかということがあったかと思うんですが、やはり、九九年の自由化以来、それが非常に極端な形であらわれているんじゃないか。そこに対する保護が全然なされないまま、多様な働き方ということで来ているんじゃないか。
 あるいは、きょうのテーマではありませんけれども、有期社員についても、この間、労働基準法の改正で、有期社員がふえることにつながるような改正があったと思っていますけれども、ふえるのはいいんですけれども、有期社員に対する保護が全然なされていないんじゃないか。
 もうちょっと言いますと、どこで保護がなされていないかということなんですけれども、低賃金ということもあるわけですけれども、やはりEU諸国なんかは有期とか派遣とか非正規労働者の数が非常に少なくて、ある意味では、言葉面どおり臨時的、一時的業務に従事するんだと。したがって、そういう労働者が少なくていいわけですから、少なくて、しかも均等待遇が図られているということですから、そう矛盾とか弊害があらわれないという形で来ていると思うんですね。
 ところが、日本の場合は、臨時的、一時的業務に派遣なんかも限定すると一応言っていますけれども、有期も同じだと思うんですけれども、私の見るところ、実際は恒常的業務に従事させていますよね。確かに、業務が従来よりは単純化したという面もあるかもしれませんけれども、実際は、派遣社員なり有期社員のほとんどが正社員と同じか、もしくはほぼ同じ恒常的業務に従事しているのが私は実態だと思いますよ。ですから、いざというときにどういうことになるかというと、景気が悪くなると、雇用の調整弁ということでイの一番に切られる。そこの点が全然野放しになっているというふうな実態があると思うんですね。
 この点は、私の経験で申し上げますと、厚生労働省は、そこらあたり、このままじゃまずいんじゃないかということで白書なんかでも随分言っておられますよ。なんですけれども、実際の法規制はないわけですから。雇用の調整弁扱いをしてはだめだという法規制は残念ながらないんですよ。ないわけですから、実際は、私の見るところ、不景気になったときの職場の現実とか、あるいは、私が余り言うのもどうかなと思うんですけれども、労働裁判においても、経営側が、こういう雇用の調整弁、そういうことがわかった上で雇って、そういうことで働いておられるんでしょう、景気が悪くなったんだからどうしようもないでしょうと言われると、残念ながら、裁判所もそれを認めざるを得ないような実態がある。
 ですから、多様な働き方とおっしゃるんだけれども、実際は、保護がないまま、非常に低賃金、不安定な形での働き方が進行している。それで雇用の調整弁という形で進行している。それを均衡待遇とか規制するような方策が全然ないままで来ていて、今回の改正案もそういう流れをさらに加速するのではないかなと思っています。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 続いて鷲見参考人に聞きたいんですが、先生の陳述の中で、今回の法の施行日が現行法での労働契約申し込みみなし規定の施行一カ月前なんだ、事実上このみなし規定の適用を排除するものだという御批判があったと思うんですが、いわば、みずから決めた法律の施行日を前にしてその効力をなくすというようなことがまかり通るということ、こういう事態を法律家としてどうごらんになっているのかということをお聞きしたいと思います。
○鷲見参考人 労働政策として、立法政策としていかがなものかなと。
 先ほども申し上げたんですけれども、とりわけ専門二十六業務で実際は一般業務を一割を超えてやっているとか、業務偽装の方で、そういう方は、ある意味でいえば、十月一日が来たら、御本人が要求さえすれば自動的に直接雇用、正社員になれるわけなんですよね。そういう方が実数としてどれぐらいおられるかわかりませんけれども、私はある程度おられるんじゃないかなと思っています。
 もうちょっと言いますと、私が知っている範囲で言うと、派遣労働者の方は職場では非常に弱い立場ですよ。何か権利主張をしたりすれば、まだ有期だったら自分の使用者に解雇されるとか雇いどめとかいう問題になりますけれども、派遣労働者の場合は声を上げたら自分が全然知らないところで自分の立場がなくなっちゃうわけですから、私の見るところ、派遣労働者の方は多少のことがあっても職場で声を上げられないと思いますよ。権利主張もできないと思いますよ。
 ですから、そういう中で三年間待たせて、一カ月前になって、あなたが主張する権利は、もう一カ月前だけれども、なくすよなんというのは、私は、期待していた労働者の立場からしたら、本当に背信的な立法政策じゃないかなと思います。
 私自身は今回の改正案自体には到底賛成できないという立場でありますけれども、仮に今回の改正案を前提としても、例えば、一年間は直接雇用みなし制度の権利を存続させるとか、経過措置をとるとか、それぐらいのことがない限りは背信行為も甚だしい立法政策だと思っております。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 続けて鷲見参考人にお伺いしたいと思います。
 法案では、業務の区別をなくす一方で、事業所単位、個人単位での期間制限をかけたというふうに政府は説明しておられます。しかし、きょう、先生の陳述で、それらは機能を発揮しないんだという御説明でありました。先ほどの足立さんの質問の中でも、個人制限を外したらいいんじゃないかということで、阿部先生の方からはそうなったら生涯派遣になるじゃないかということがありましたけれども、これはつまり、裏を返せば事業所単位の期間制限というのはやはり意味がないということなのかなというふうに聞きながら思ったわけです。
 一方で、無期雇用の派遣労働者は期間制限すら対象にならないわけでありまして、有期に比べて雇用が安定しているというのが政府の説明なんですが、果たしてそうなのかと。実例も多く見られてきた目で、その点、いかがかということをお聞きしたいと思います。
○鷲見参考人 そこだけの実態で申し上げますと、何度も言っていますけれども、派遣労働者は自分の知らないところで、つまり、とりわけ景気が悪くなると派遣先会社は派遣会社に対して労働者派遣契約の中途解約だって、平気でという言葉が適切かどうか別にして、私はやっていると思います。
 そうしますと、派遣会社の方は、派遣先に対して立場が弱いですから、将来のまた契約を考えても立場が弱いですから、ほぼ唯々諾々と中途解約ものんでいる実態があるんじゃないかと私は思います。
 そうしますと、中途解約された場合のしわ寄せというのは結局は派遣労働者に行くわけでして、リーマン・ショックのときも、これは厚生労働省が発表している資料で、厚生労働省の方はよく御存じだと思いますけれども、リーマン・ショック時の無期雇用派遣労働者の解雇率は七二・六%です。登録型派遣労働者の解雇率が七五・八%で、ほとんど変わらないということで、このとき、無期雇用派遣労働者も登録型派遣労働者も含めて全て七割を超えているということでしたので、無期雇用派遣労働者だからといって、派遣制度のもとでは、いわば、いざとなったときに首を切られる、職を失うという率は全く同じかと思います。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 次に、関根参考人に伺いたいと思うんです。
 専門二十六業務の方々の雇用の安定をどう図るのか。既に議論もありましたけれども、最初の陳述で、安定雇用と均等待遇と派遣先企業の責任ということを言われたと思うんです。かつて優先雇用という仕組みもあったと思うんですが、とりわけ派遣先企業の責任という点でもう少し何かございましたら、お聞きしたいと思っております。
○関根参考人 決して、二十六業務の人たちも、派遣で働き続けることを本当に望んでいるわけではないんですね。ただ、少なくとも失業するよりはましだということで、今回、この三年で切られるという措置は本当に困るというふうに言っているわけです。やはり雇用の安定というのは極めて重要だというふうに思っております。
 それから、派遣先の責任ということについては、さまざまな側面があるんですけれども、例えば、育児休業等を取得するという場合についても、派遣元が認めても派遣先は認めない。結果として、派遣労働者が育児休業をほとんどとれないで、みんな解雇になっているわけなんですけれども、育児休業を仮にとれた派遣労働者も、同じ派遣先に戻れない。そういった意味では、派遣先にもきちんと定めていく必要があるだろうというふうに考えております。
 派遣切り等の問題があったときに、全く交渉の責任もない、団体交渉の応諾義務もない。それから、派遣元が倒産した場合の賃金支払いについても責任を負わなくていい。そういった部分について、派遣先の責任をさまざまなところで定めていくべきだというふうに考えております。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 もう一度、鷲見参考人に伺いたいと思います。
 均衡・均等待遇の問題なんですが、派遣労働者の処遇について、差別的待遇のいろいろな実態があると思うんですが、そういう実態と解決のための方策ということで伺いたいと思います。
 政府は、日本では均等待遇はなかなか難しいんだという話をすぐするわけですが、果たして本当にそうなのかということで見解をお聞かせいただければと思っております。
○鷲見参考人 日本には企業横断的な賃金体系は確立していないんじゃないかとか、均等といっても、どの労働者とどの労働者を比べて賃金を比較するんだとかいう議論があることは私も知っていますし、そういう点での難しさが全くないと言うつもりはありません。ですから、職種ごとに見るとか、労働者の働いている実態を見ながらということは、それは当然必要なわけです。
 ただ、皆さん、どういうぐあいにお考えなんでしょうか。日本の派遣法は、自由化業務に関して言えば、一年、最長三年の期間制限ですよね。それで、他の参考人も、かなり業務が単純化している面もあるんじゃないかとおっしゃられましたけれども、例えば一般業務なんかでは三年も働けば、いや、私は一年、二年でもと思っていますけれども、正社員とほぼ同様の働き方を、一年、一年でなくて数カ月でしている人もいると思いますけれども、しているという実態があるのではないでしょうか。
 ですから、現在の派遣法は一般業務から正社員への移行の道筋をつくっているわけですから、今の一年、三年の期間制限を前提とする自由化業務でいえば、私は、均等待遇を実現しようと思ったら、やっている仕事とか、その対象となる均等の賃金を見つけることがそう難しいとは思えません。
 そういう意味では、EU諸国とか中国、韓国などでも均等待遇、ほぼ日本ぐらいではないでしょうか、均等待遇を確立していないのは。均等待遇を早急に確立することが重要だと思っています。
 政府の方も、教育訓練とかキャリアアップを図ることだけを言わないで、教育訓練やキャリアアップを図るんだったら、それを右から左に、均等待遇を実現する中で、あるいは実現しつつということは十分できるのではないかと思っております。
○堀内(照)委員 ありがとうございます。
 最後に、鷲見参考人に伺いたいと思います。
 今度の法案は、派遣が臨時的、一時的だという原則を盛り込みながら、実際にはその担保となる期間制限をなくし、派遣をふやす方向を盛り込みながら、正社員化なんだとあくまで強弁をする。
 しかし、一方で、附則では、雇用慣行が損なわれるおそれがある場合は速やかに検討すると。これはどういう場合かということで、私は本会議で総理にお尋ねしましたら、正社員が派遣労働者に置きかわる常用代替が常態化する状況が考えられると。やはりふえるということを想定されておられるような答弁でした。
 こういう法案のありようというのは、これもぜひ、法律の専門家としてどう評価するのかということを最後にお聞かせいただきたいと思います。
○鷲見参考人 常用代替防止原則を尊重する、これは建議でも言っていますし、政府の方も言っていると思います。
 それから、今度、派遣法の二十何条だったかと思うんですけれども、厚生労働大臣が臨時的、一時的が原則であることを運用上配慮するというような条文が入ったかと思いますが、私は、この条文は非常に曖昧な条文で、いかがなものかと思っておりますけれども、ともかく、臨時的、一時的だという言葉自体が入ったことが悪いと言うつもりはありません。
 あるいは、附則で、雇用慣行が損なわれるおそれがある場合と書いておるわけでして、やはりこの辺は、今回の改正案に対して懸念をあらわす声が多数あるわけですから、このままだと一生派遣労働者のままで、あるいは、正社員がどしどしリストラ解雇されてかわりに派遣労働者ということになるのではないかと懸念する多数の声があるわけですから、その辺を反映した条項なり附則なのかなと思っております。
 しかし、臨時的、一時的だとか、あるいは建議で常用代替防止を尊重すると言っておりますけれども、法律としましては、先ほど私が言いましたように、派遣労働者がふえて、正社員が派遣労働者に切りかえられる、あるいは派遣労働者を使う派遣先にとっては非常に使い勝手のいい法律になるということです。
 本来、やはり間接雇用というのはいろいろな弊害があるんです。時間がないので言い切れませんけれども、であるからこそ、戦前の例なり、間接雇用の弊害、人貸し業はだめだということで禁止されてきたのを、極めて限定的な形で、専門業務ということで解禁したのが、私はそれもいかがだったかなと思っていますけれども、そんなわけなんです。
 それを、この間、緩和に次ぐ緩和、拡大に次ぐ拡大という形でやってきているのは、やはり弊害を非常に極端な形で、リーマン・ショックのときにはああいう形であらわしたわけですし、さらにそれを倍加するような法案ではないかと思って、非常に懸念しております。
 以上です。
○堀内(照)委員 ありがとうございました。
 時間の都合で皆様に質問できなかったことをお許しください。
 終わります。