国会論戦・提案

「生涯派遣」の押し付け 派遣法改悪

「生涯派遣」の押し付け 堀内氏 派遣法改悪 廃案に 衆院本会議

 安倍内閣が今国会で成立を狙う労働法制の大改悪の最初の具体化となる労働者派遣法改悪案が12日の衆院本会議で審議入りしました。質問に立った日本共産党の堀内照文議員は、労働法制は本来、人間らしく働ける環境をつくるためのもので、「打破すべき岩盤規制」とは呼べないと、安倍晋三首相の姿勢を厳しく批判しました。

 堀内氏は戦後の労働法制の大原則である直接雇用に風穴を開けるのが労働者派遣法の制定だったと指摘。その後、規制緩和が進められ、非正規雇用を拡大させたと述べました。

 今回の改悪案は(1)派遣元に無期雇用されていれば期間制限をなくす(2)労働組合から意見聴取すれば、受け入れ期間を際限なく延長できる(3)別の部署に配置換えすれば、同じ人を使い続けられる―と問題点を指摘。「正社員から派遣への置き換えがますます進むことになる」と迫りました。

 安倍首相は、派遣延長について、「(会社側が)事前に対応方針を説明する」というだけで常用代替防止の担保を何も示せませんでした。派遣労働者の正社員化についても、「正社員募集の情報提供を義務付ける」と繰り返すだけ。堀内氏は「教育訓練や情報提供をいくら進めても、正社員への登用が保障されない。派遣先に雇用責任を果たさせるべきだ」と求めました。

 また、堀内氏は日本の雇用慣行が損なわれる場合は再検討するなどとの「修正」がくわえられたことについて、「派遣労働が拡大することを危惧しているということだ」と指摘。「労働者に『生涯派遣』を押し付けるような法案は廃案以外ない」と批判しました。

2015年5月13日(水)しんぶん赤旗より

 

◆議事録 2015年5月12日 衆議院本会議

○堀内照文君 私は、日本共産党を代表して、労働者派遣法改正案について質問します。(拍手)
 安倍総理は、戦後以来の大改革などと称して、正社員ゼロ、労働者の使い捨て、長時間労働の押しつけとさらなる過労死を生み出す残業代ゼロ制度など、雇用の破壊を進めようとしています。その最初の具体化がこの派遣法改悪です。
 昨年秋の臨時国会で、総理は、派遣法改正案の質疑の際、我が党の高橋千鶴子議員の質問に答えて、全ての人々が生きがいを持って働くことができる環境をつくっていくと述べました。
 ならば、なぜ、労働法制を、打破すべき岩盤規制と呼ぶのですか。労働法制とは、本来、人間らしく働ける環境をつくるためにあるのであって、拡充こそすれ、規制打破の対象とはなり得ないではありませんか。総理の基本的な認識を伺います。
 ことしは戦後七十年です。軍国主義を一掃し、日本国憲法のもとで新しい歩みを始めた国会は、戦前にはなかった労働者を保護する法整備を進めてきました。その一つ、労働基準法は、その第六条で中間搾取を排除し、また、職業安定法は、第四十四条において労働者供給事業を禁止し、直接雇用を大原則とすることを打ち立てたのであります。
 ですから、一九八五年、労働者派遣法審議の際、我が党は、これは直接雇用の原則に風穴をあけ、労働者の人間としての尊厳をも奪うものだと厳しく批判をしました。
 この派遣法制定から三十年がたちました。この間、一九九九年の派遣労働の原則自由化、二〇〇三年の製造業への解禁などの規制緩和が次々進められました。結果、非正規雇用が広がり、働く貧困層がふえ続けました。
 総務省の労働力調査では、一九九五年から昨年にかけて、正規の職員、従業員が五百万人減る一方で、パート、アルバイトや派遣など非正規雇用がおよそ一千万人ふえています。この間の労働法制の規制緩和が不安定な非正規雇用をふやしてきた一因であるとの認識が、総理にはないのですか。お答えください。
 リーマン・ショック後、大量の派遣切りが行われ、派遣村が各地にできるなど、社会問題となりました。登録型派遣や製造業への派遣の禁止など規制強化の世論が高まり、民主党政権に託されました。しかし、二〇一二年改正までにそれらはほとんど骨抜きにされ、唯一残ったのが、期間制限違反などを犯した派遣先企業が労働者に労働契約を申し込んだとみなす規定でした。それさえも、施行はことしの十月一日へと先送りされました。
 本法案が施行日を九月一日にしているのも、このみなし規定を実質発動させないためではありませんか。答弁を求めます。
 次に、法案について具体的に伺います。
 派遣労働は、あくまで臨時的、一時的な雇用が原則であって、常用代替であってはならないと政府は説明してきました。しかし、本法案は、これを担保する派遣期間制限を効力なきものにしようとしています。
 法案では、派遣労働者が派遣元に無期雇用されていれば、期間制限がかかりません。有期雇用に比べたら身分が安定しているというのがその理由ですが、無期雇用の派遣労働者も、派遣先の仕事がなくなれば契約を解除され、解雇されてしまいます。
 リーマン・ショック後の派遣切りでも、常用型無期雇用の派遣労働者のうち雇用が継続したのは二割強にすぎず、離職者のうち、解雇は九四・三%にも上っています。これでどうして雇用が安定していると言えるのですか。お答えください。
 この法案では、新たに事業所単位及び個人単位で期間制限を設けます。
 事業所単位では、同一事業所での派遣労働者の受け入れは三年を上限とするとしています。しかし、過半数労働組合等から意見を聴取し、仮に異議があっても対応方針等の説明をすれば、三年を超えての受け入れが可能になります。意見聴取と説明を義務づけただけで、どうして規制が強化されると言えるのですか。派遣先企業の都合で、歯どめなく派遣労働を使えることになるではありませんか。答弁を求めます。
 個人単位の期間制限は三年を上限とするというものの、部署さえかえれば、同じ派遣労働者をずっと使い続けることが可能となるではありませんか。
 これがまさに生涯派遣と言われるゆえんです。そればかりか、正社員から派遣への置きかえがますます進むことになりませんか。そうでないというなら、その根拠を明確にお示しください。
 法案は、いわゆる専門二十六業種を廃止するとしています。その理由として、専門二十六業種と一般業務との区別がわかりにくいといいます。しかし、そもそも、期間制限のない専門業務といいながら、一般業務と変わらない仕事に従事させてきたことが問題です。
 現状を追認するのではなく、専門業務をより厳密化するとともに、専門業務で三年を超えて働いてきた派遣労働者を派遣先に優先的に雇用させるべきではありませんか。答弁を求めます。
 法案では、派遣労働者の正社員化を含む雇用の安定のためとして、キャリアアップやキャリアコンサルティングを定めています。教育訓練や情報提供、相談活動を幾ら進めるといっても、それだけでは正社員への登用が保証されるものではないではありませんか。
 また、派遣期間終了時に雇用安定化措置を派遣元企業に義務づけるとしていますが、派遣先企業へは何も義務を課さないのですか。派遣先がかかわるのは、派遣元から直接雇用の依頼を受けるという点だけです。派遣元に対して圧倒的に力の強い派遣先企業が断れば、正社員の道は断たれてしまいます。安定した雇用というなら、派遣先企業に雇用責任を果たさせるべきではありませんか。答弁を求めます。
 この法案は、第百八十八回臨時国会での審議開始時に公明党が示した修正案を取り込んで提出されています。この修正について、三点伺います。
 第一は、派遣労働が臨時的、一時的なものであることを原則とする旨を明記していますが、その原則を担保する保障はどこにもありません。しかも、条文は、第二十五条、運用上の配慮の条項に盛り込まれました。原則といいながら、どうして配慮という位置づけなのですか。
 第二に、施行後の動向を踏まえ、日本の雇用慣行が損なわれるおそれがある場合は速やかに検討する旨を附則に規定しています。日本の雇用慣行が損なわれるとは、どういう事態を想定されているのですか。これは政府自身が本法案によって派遣労働が拡大することを危惧しているということではありませんか。総理の答弁を求めます。
 第三に、均衡・均等待遇のあり方を検討するため、調査研究等を行う旨を附則に規定しています。これまで政府はあれこれ理由をつけて均等待遇に背を向けてきましたが、これまでの姿勢を改めるべきではありませんか。お答えください。
 修正の手続も問題です。
 今回の修正は、労働政策審議会では一切審議されていません。これまで、労働法制を決める際には、ILO原則にのっとり、政府、労働者、使用者の三者が会する労政審での審議を通じて法案が閣議決定され、国会で審議してきたのに、なぜですか。形だけの修正で取り繕っても、法案のほころびは隠しようもありません。塩崎厚生労働大臣の答弁を求めます。
 そもそも、この間の産業競争力会議や規制改革会議などの議論を政府の方針とし、厚生労働省の頭越しに法改正を迫るやり方は、極めて異常です。総理の見解を求めます。
 最後に、本法案は、これまで、国民の反対の前に二度も廃案に追い込まれました。経済界の言うままに労働者に生涯派遣を押しつけるような法案は廃案以外にありません。
 以上を強調し、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 堀内照文議員にお答えいたします。
 雇用制度改革についてお尋ねがありました。
 労働法制については、経済産業構造の変化に応じ、雇用の安定を図りつつ、働く方々の多様なニーズに対応した働き方を実現する観点から、今後より一層の改革を推し進める必要があることから、岩盤規制という表現を用いたところであります。
 こうした観点から、正社員化の道を開くための派遣法の改正、高度専門職が創造性を存分に発揮できるようにする新たな制度の創設などの改革を進めています。
 こうした取り組みにより、あらゆる人が生きがいを持って活躍の場を見出すことのできる社会を目指していく、そのような考え方に変わりはありません。
 これまでの労働法制改正についてお尋ねがありました。
 労働法制については、経済産業構造の変化に応じ、雇用の安定を図りつつ、働く方々の多様なニーズに対応した働き方の実現を目指し、逐次改正を行ってきたところであります。こうした改正は、雇用の場の確保にも寄与するなど、一定の成果があったものと考えています。
 一方、非正規雇用労働者数は、産業構造の変化、女性や高齢者の就労の増加などにより長期的に増加し、また、景気、雇用失業情勢の影響等を受けて増減するものであります。したがって、個別の制度改革がどの程度非正規雇用労働者数の増減に寄与したかをお答えすることは困難と考えています。
 労働契約申し込みみなし制度についてのお尋ねがありました。
 平成二十四年の法改正により、派遣先において、派遣受け入れ期間の制限に反するなど違法な派遣の受け入れがある場合に、その派遣労働者に直接雇用の契約を申し込んだものとみなす制度が設けられ、本年十月からの施行が予定されています。
 他方、改正案では、わかりにくい等の課題がある業務単位の期間制限を廃止し、全ての業務に適用されるわかりやすい仕組みを設けることとしています。
 施行日については、円滑に施行するため、周知期間等を踏まえたものであり、みなし規定を実質発動させないためとの御指摘は当たりません。
 無期雇用の派遣労働者についてのお尋ねがありました。
 無期雇用派遣労働者は、有期雇用のように雇いどめの対象とならないことから、一般に、有期雇用に比べて雇用が安定していると言えます。
 今回の改正案では、無期雇用の派遣労働者について、長期的なキャリア形成を視野に入れた計画的な教育訓練等を義務づけるほか、派遣会社が派遣契約の終了のみをもって解雇することがないよう、許可基準に示すこととし、これらにより雇用の安定を図ることとしています。
 なお、御指摘の調査は、中途解除された派遣契約に限った調査であり、無期雇用の派遣労働者の全体の状況を示すものではないと承知しています。
 期間制限の見直しについてお尋ねがありました。
 今回の改正案では、業務により異なる現行の期間制限を廃止し、全ての業務を対象とし、派遣労働者ごとの個人単位で、同じ職場への派遣は三年を上限とし、延長できない、ただし、派遣先の事業所単位で、受け入れ期間の上限を三年とした上で、延長する場合には、現場の実態をよく知る過半数労働組合等からの意見聴取を義務づけるといった、二つの期間制限を設けることとしています。
 これにより、職場をかえて同じ派遣労働者を受け入れる場合を含め、事業所単位の期間制限が課せられることとなり、また、意見聴取について、反対意見があったときには事前に対応方針を説明するなど、労使間で実質的な話し合いができる仕組みをつくることとしています。
 このように、生涯派遣や、正社員から派遣への置きかえを進めるものではありません。
 専門業務の位置づけについてお尋ねがありました。
 現行は、派遣先での受け入れについて、専門的な二十六業務を除き期間制限を設けていますが、専門性が時代とともに変化し、また、わかりにくいといった課題があります。
 このため、今回の改正案では、現行の期間制限を廃止し、全ての業務を対象とし、派遣労働者ごとの個人単位で、同じ職場への派遣は三年を上限とするなどの期間制限を新たに課すこととしています。
 これにより、二十六業務は新たに制限対象となりますが、個々の労働者の雇用が途切れないよう、派遣元に雇用安定措置を義務づけることとしています。
 さらに、今後、期間制限に違反して派遣労働者を受け入れた派遣先については、派遣労働者に労働契約の申し込みをしたものとみなすこととしており、派遣労働者の保護がより強化されることとなります。
 派遣労働者の正社員化についてのお尋ねがありました。
 今回の改正案では、正社員を希望する派遣労働者について、その道が開けるようにするため、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置や、派遣期間を通じた計画的な教育訓練を新たに義務づけることとしています。
 また、派遣先に対しても、派遣労働者への正社員募集に関する情報提供の義務づけなどを進めることとしています。
 これらは、これまでになかった仕組みであり、キャリアアップ助成金の活用とあわせ、働く方の選択がしっかり実現できるような環境を整備してまいります。
 雇用安定措置に関する派遣先の役割についてのお尋ねがありました。
 派遣労働者のキャリア形成については、雇用契約の当事者である派遣会社が一義的な責任を負うべきものと考えております。
 今回の改正案では、この派遣会社の責任を強化し、派遣期間が満了した場合に、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置を新たに義務づけることとしています。
 また、派遣先についても、直接雇用の依頼があった派遣労働者に対し、労働者の募集に関する情報を提供するなど、新たな義務を課すこととしています。
 派遣労働が臨時的、一時的なものであるとの原則についてのお尋ねがありました。
 今回の改正案では、派遣就業は臨時的かつ一時的であるという原則のもと、派遣の受け入れ期間について、派遣労働者の個人単位と派遣先の事業所単位の二つの制限を設けることとしています。
 厚生労働大臣による運用上の配慮についての規定に盛り込むことにより、この原則がより明確化されるとともに、厚生労働大臣が期間制限の規定を運用するに当たり、考慮することとなります。
 派遣労働者数の動向等を踏まえた検討規定についてお尋ねがありました。
 日本の雇用慣行が損なわれるとは、現在の我が国においては、例えば、正社員が派遣労働者に置きかわる常用代替が常態化するような状況が考えられます。
 今回の改正案では、希望する派遣労働者の正社員化を進めることとしていますが、派遣労働者数は、景気や雇用失業情勢のほか、多様な働き方を希望する労働者の意向など、さまざまな要因に影響を受けるものであります。
 このため、施行後のいかなる状況にも対応できるよう、必要に応じて検討を行うこととしたものであります。
 均衡・均等待遇のあり方についてお尋ねがありました。
 同一労働に対し同一賃金が支払われるという仕組みは、一つの重要な考え方と認識しています。
 しかし、ある時点で仕事が同じであったとしても、さまざまな仕事を経験し責任を負っている労働者と責任の浅い労働者との間で賃金を同一にするということについて、直ちに広い理解を得ることは難しいものと考えています。
 このため、改正案では、賃金、教育訓練及び福利厚生の面で派遣先の責任を強化するなど、まずは派遣先の労働者との均衡待遇を進めることとしています。
 また、均等・均衡待遇の確保のあり方を検討するため、均等待遇の原則が適用されている諸外国の制度や運用状況等に関し、調査研究に取り組んでいくこととしており、この旨を法案に規定しています。
 産業競争力会議等の議論についてお尋ねがありました。
 産業競争力会議や規制改革会議では、設置目的に従い、さまざまな有識者から広く御意見をいただき、関係省庁とも十分に議論を行っております。
 一方で、派遣法を初めとする労働関係法制の見直しについては、現場を熟知した労使の参画を得て議論されるべきものであり、公労使の三者で構成される労働政策審議会においても十分に議論した上で対応しているところです。
 安倍内閣としては、派遣法の改正等を含め、あらゆる人が生きがいを持って活躍できる場を見出すことができる社会を目指してまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕
○国務大臣(塩崎恭久君) 堀内照文議員から、一点お尋ねを頂戴いたしました。
 派遣法改正案の修正手続についてのお尋ねがございました。
 今回の労働者派遣法改正案については、公労使から成る労働政策審議会の建議を踏まえたものです。また、さきの臨時国会からの修正に関しては、労働政策審議会の建議の内容の範囲内のものであると認識しているため、改めて諮問しなかったものでございます。
 政府としては、今後も労働政策審議会の建議を十分に尊重して対応してまいります。
 以上でございます。(拍手)