コラム

2018年03月18日
 

兵庫民報連載 真の働き方改革のために〈3〉

   今度の「働き方改革」関連法には、いま一つ、労働法制の原則を根底から覆す重大な改悪が盛り込まれています。それが、雇用対策法の改悪です。法の目的に「労働生産性の向上」が、国が講ずべき施策のなかに「多様な就業形態の普及」が盛り込まれています。
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    「生産性向上」とは何か。首相官邸のもとに設置された「生産性向上国民運動推進協議会」の第一回会議(二〇一七年五月)では、トヨタ自動車の顧問が、油揚げの選別工場を例にとって説明しています。労働者の動作を後ろからビデオで録画し、作業を細かく分析。一秒単位で作業時間を記録し作業ごとの所要時間をグラフ化して、無駄はないかをチェックします。そして【改善効果】として、労働生産性がプラス三三%(作業員マイナス一名、四名→三名)と説明されています。結局は人減らし、合理化です。
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   「多様な就業形態」について、厚生労働省は「雇用契約によらないような働き方」であると認めています。このことの持つ意味について、働き方改革実現会議が始まる直前の二〇一六年八月、厚労省から出された「働き方の未来 二〇三五」という文書によく表れています。
   ここでは、将来、技術革新により、「時間や空間や情報共有の制約はゼロになり」、「個々人の働き方の選択肢はバラエティに富」むなどとして、「正規、非正規と区別する意味がなくなる」「働く人が働くスタイルを選択する」「企業との関係も変わる」などと根拠なく描いています。
    そして「今までの労働政策や労働法制のあり方を超えて、より幅広い見地からの法制度の再設計を考える必要性が出てくる」とし、「より多様な働き方」は「何らかの形での契約が結ばれ」ているのだから「民法が基礎になる」とまで述べています。労働者保護が原則の労働法制の否定です。雇用契約によらない「多様な就業形態の普及」はまさにこうした働き方を広げようというものにほかなりません。
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   そして、すでにそこへ向けた具体化がすすんでいます。「働き方改革実現会議」の直後、二〇一六年七月から十二月にかけて、厚労省内で「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」が開かれました。
   労働政策の決定に際しては、有識者などと、労働者代表、使用者代表が同数参加する「三者構成」が国際的にも認められた大原則です。ところが、「働き方やそれに伴う課題が多様化する中、旧来の労使の枠組に当てはまらないような課題や就業構造に関する課題など基本的課題については、必ずしも公労使同数の三者構成にとらわれない体制で議論を行った方がよいと考えられる」とする同会議の報告を受け、三者構成が原則の労働政策審議会のなかに、労働組合関係者が三人に対して、企業役員が五人、財界系シンクタンク一人という労働政策基本部会がすでに設けられています(ほか米企業などの顧問弁護士一人、学識者が五人)。
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    労働行政の根幹を揺るがす大問題です。今度の「働き方改革」関連法案を廃案に追い込むたたかいは、戦後の労働法制の、労働者保護の大原則を踏みにじるやり方を許さない大きな意義をもつものです。

(兵庫民報2018年3月18日付)