活動記録

衆議院欧州各国社会保障制度及び労働事情等調査議員団の一員としてドイツ、ポーランド、ベルギー、ルクセンブルクを訪問

 14日から22日にかけて、衆議院の調査団の一員として、ドイツ、ポーランド、ベルギー、ルクセンブルクを訪問し、社会保障制度や労働問題などについて、調査をおこないました。

 私のほかのメンバーは厚生労働委員会の自民党、公明党、おおさか維新からの5人で、計6人の調査団でした。

≪14日≫

○成田発で12時間弱かけてベルギーのブリュッセルへ。さらに乗り継いで、現地時間の夕方にドイツのベルリンへ。

≪15日≫

○ドイツ連邦保健省のルッツ・ストロッペ事務次官と意見交換

B独連邦保健省 (19) ドイツの介護保険は日本も手本にした制度ですが、もともと給付は日本より狭い部分保険制度です。費用は全額保険によって賄われています。低所得者には社会的扶助(生活保護制度のようなもの)による介護給付があります。この間、認知症の評価も含むなど介護認定の改革と給付の拡大をおこない、それに伴う保険料の引き上げも国民的な支持を受けて成立したとのこと。高齢化への対応として、健康増進、予防のための新しい法律がようやく成立したとも。

 介護職不足はドイツでも共通しているようで、高齢化以後部門で2~3万人の不足だそうです。そのため、介護と看護を共通の専門職として扱う新法も検討されているようですが、それぞれの専門性の評価などをめぐってさまざまな議論があるといいます。 

 介護離職についても、特に女性の離職が多く、5、6年前に、介護のために職場を離れても3年以内なら元の部署に戻れるようにとの新しい法律ができたといいます。介護休業は、6年間減額はあるものの所得保証があります。

 部分的な給付であるドイツと家族介護から社会で支えようと導入された日本とでは、同じ介護保険でも単純に比較はできませんが、低所得者対策や予防のためのとりくみ、介護離職を食い止めるための方策は大事だと思いました。

 

○フランツ・クニープス企業疾病金庫中央連合会会長と意見交換

D独BKK (4) ドイツの医療及び介護保険は、被用者保険が基本です。その保険者が各地にある疾病金庫。応対してくださったのは、その全国組織の長。

 高齢化が進み、医療コストはドイツでも増大傾向にありますが、クニープス氏は、それを抑えることは、コスト面のみならず、健康な労働者を社会に供給し、クリエイティブな研究者を生み、高齢者も元気で働けるなど、生産性にとってもプラスだと指摘し、だからこそ予防法ができたと強調しました。

 特に職場における予防が大事で、大企業の中で予防のスキームをつくって実践をはじめるとのこと。これは法的な拘束力はないが、企業がその職場の労働者、労働組合などとともに協議して決めるので、実行を迫られる政治的な圧力になります。その成果を中小規模の企業にも広げていくし、業種別のスキームも検討しているといいます。また、企業にとっても、その取組そのものが企業PRになり、また税制上も予防措置にかかる費用が控除の対象となります。

 また小規模病院が多いなかで、機能を高めた大規模病院への集約化も進めていると述べました。ただ、その際、単なる集約ではなく、元の地域にも、外来や簡単な入院治療ができる医療機能を残すといいます。

 

○高齢者施設を視察

E独ベーテル (3) ベルリン市内にありながら、広い庭と緑がいっぱいの施設でした。

 待機者はいないのかとの問いに、ドイツ全体では、需要より供給の方が上回っているといいます。ただ人気施設は待機もあるようですが、個別契約のため、全体の待機者などはわからないようです。

 介護の担い手不足解消へ、看護も含めた専門職にするとの新法の検討については、ゼネラリスト教育を受けた人材が増えることそのものはいいとしても、それぞれの専門性の違いから現場では違和感もあるようです。そして、問題の解決のためには、介護職の給与の引き上げやシフト勤務の改善などが急務だとズバリ指摘されました。非常に納得がいきました。

 

○夜はドイツ大使よりブリーフィング

 

 

≪16日≫

○シャリテ医科大学病院視察

IMG_2619 高度な感染症病棟などを視察。土曜にも関わらず、私たちのためにドクターが出勤して下さり、丁寧な説明を受けました。

 写真は、微粒子にも対応した高濃度のフィルター。

 それにしても、敷地が広く、ゆったりとしたつくりの病院でした。G独シャリテ病院 (15)

 

 

 

 

 

 

○午後に空路でベルリンからフランクフルト経由で、ポーランドのクラクフに。その後、大使からブリーフィング。

 

≪17日≫

○日本美術技術博物館視察

Hクラクフ (7) 映画監督のアンジェイ・ワイダ氏が京都賞を受賞した賞金をはじめ、募金などの財政支援で設立され、浮世絵をはじめ、日本ゆかりのさまざまな展示がされています。ポーランドでは主要な大学をはじめ、さまざまに日本語を学ぶ機会があるようで、日本とポーランドとの友好の拠点になっていることがよくわかりました。

 

 

 

 

○アウシュビッツ・ビルケナウ ナチスの強制収容所視察

IMG_2727 言わずと知れた場所です。

 ユダヤ人だけでなく、ポーランドの反ナチスの運動家、障害者などが犠牲に。写真左は、アウシュビッツの門で、「働けば自由になる」とあるが、大半が、ここにたどり着いた途端にふるいわけられ、ガス室へ。

 収容所でも過酷な労働の決して自由になれない地獄が待っていました。

IMG_2780 写真右は、「アンネの日記」で有名なアンネ・フランクも一時収容されていた、第2に収容所「ビルケナウ」の門。

 同博物館では、単にナチスやヒトラーが悪だったということではなく、収容されたユダヤ人同士でも、ナチスの狡猾な分断政策により、監視する側とされる側に分けられたことなども紹介されているなど、狂気の中で、誰しもがその一方の側に立ちうることを現代に警告するものとなっています。

 韓国人の若者たちの集団も目にしました。ドイツ、イタリアとともに、アジアへの侵略戦争をすすめた日本の政治家がここにきて、過去と正面から向き合うことが必要だと考えさせられました。

 

○夕方、クラクフから空路でワルシャワに。

 

 

≪18日≫

○ポーランド下院社会政策・家族委員会所属議員との意見交換、社会対話協議会のメンバーと意見交換、家族・労働社会政策省の次官や担当局長らと意見交換

 この日は、ポーランドの議会関係者(与党)、社会対話協議会(政労使3者による政策協議機関)、政府関係者と立て続けに懇談。ポーランドの社会保障や雇用政策について、多角的、重層的にとらえることができました。

L対話協議会 (1) ポーランドでは、政労使3者による社会対話協議会が民主的プロセスを補う制度として憲法上も位置づけられ、情報、交渉、協議の3段階で国の法案作成にあたり、話し合いが義務付けられているといいます。IMG_2812

 ポーランドでは昨年秋に、誰も予想していなかった保守政権への政権交代がおこり、そのもとで、子ども手当の実施をはじめとする子育て支援と最低賃金の引き上げを目玉とする雇用対策をすすめているようでした。子ども手当は、第一子には所得制限がありますが、第2子以降は所得制限はありません。それはあくまで子育て家庭を支援するものであり、何に使うこと必要かはその家庭が一番よくわかっているとの考えからでした。手当実施以降で伸びた消費は電化製品などですが、それも子ども(のために)も含めて使用されるもので、趣旨に反するものではないときっぱり。ただその財源のために、銀行税の導入、小売店の売り上げに課税する、社会保険料改革などをすすめるといいます。低収入の人の方が高収入の人より高い税に苦しめられているとして、公平な税制を目指すというのですが、小売店の売り上げへの課税は重くならないかとも心配になりました。限られた時間で制度について詳しくお聞きできなかったので何とも言えませんが。

 最低賃金の引き上げは、社会対話協議会でも当然論議になりましたが、月額の最賃については合意を得られず、政府からの労使双方よりも高い金額の提案で実現しました。時給については、協議会の合意の中身が実現しています。

 30歳までの若者を雇用した企業には社会保険料を免除するなど支援して、10万人の雇用を目標にしているといいます。これとEU共通の施策とあわせて、失業が4分の1に減ったそうです。

 賃金引き上げについては、少子高齢化と労働力人口の流出などが課題になる中で、質の高い労働力の確保のために必要だとの認識が、労使双方にあるといいます。同時に、労組としては、協議会による対話のみならず、ときにはストも打ってたたかってこそだと強調されました。(写真は、社会対話協議会での懇談と政府の前で繰り広げられていたデモンストレーション)

 

○夜は、在ポーランド日本企業関係者との懇談

 

 

≪19日≫

○YKKポーランド工場視察

 細かい手作業の多い工程からか、女性の多い職場でした。出生率が低いといわれるポーランドですが、この職場については、適齢期の女性がよく産休に入るといいます。EU指令やポーランドの法制で、労働者の待遇などが守られているという印象を受けました。

 

○高齢者専門家のある病院を視察

P高齢者施設 (39) 高齢者を専門にみる珍しい病棟。複数の病気をもつなど、高齢者に特有の症例を専門的に診ていこうという病棟で、専門医とともに、各科とも連携しているといます。地域とも連携をすすめ、地域の高齢者をフォローしています。駆け足でしたが、丁寧に案内していただきました。

 

○ワルシャワから空路でベルギー・ブリュッセルに

 

○ベルギー大使館でブリーフィング

 

≪20日≫

○ベルギーの保育園視察

Rべ保育園 (28) ベルギーでは、3歳までが保育園に通っています。保育士の配置基準などは、ここ2、3年でようやく決められたばかりだといいます。それも、当初保育士1人に対して子ども8人だったのが、保育士1人に対して子ども9人にされたといいます。日本のように年齢別の配置基準ではありません。

 視察した保育園では、0~18か月の子を預かるクラス×2、18か月~2、3歳を預かるクラス×2の4クラス編成でした。砂の感覚や体を使った保育、言語を重視した教育などが実施されていました。驚いたのは紙芝居。現地でも「kamishibai」と発音して子どもたちに見せていました。隣には、その上の年齢の子どもらが通う幼稚園、小学校があり、通いなれたところを順々に移っていくといいます。

 こちらも短時間でしたが、丁寧に対応していただきました。

 

○欧州議会視察

IMG_2923 欧州議会の本会議場や委員会室などを視察。

 この写真は本会議場ですが、委員会室でも、約400席も!

 当然ですが、同時通訳なども完備。

 

 

 

 

 

 

 

○欧州委員会雇用総局長と意見交換

T雇用総局 (3) 同一労働同一賃金がある程度確立しているヨーロッパですが、それでも正社員と同じ仕事をしていても、個人事業主扱いにされ、賃金差があるなど課題があるといいます。大手電機メーカーの修理部門やNHK受信料の徴収業務など、日本でも、親会社の指示に従って業務をしているにも関わらず、契約上は請負にされ、労働者として扱わない事例があり、共通していると感じました。

 また移民政策についても、広く社会保障をいきわたらせてこそ、コストはかかっても、社会の安定と健全な労働力の供給につながり、長期的には社会の安定、経済力、税収も向上にもつながると強調されていたことも印象的でした。

 

○ブリュッセルからバスで移動、ルクセンブルクに

 

○ルクセンブルク大使館主催のブリーフィング

 

≪21日≫

○欧州委員会保健総局公衆衛生・国別情報・危機管理担当部長らとの意見交換

V保健総局 (19) ここでは、ストックホルムにある伝染病などを管理するセンターともネット中継でつないで、総勢10人以上の担当部局の全員がそろっての意見交換となりました。

 条約に基づき、①備え、②調査・監視、③警告、④危機の低減・除去、⑤連携・調整といったそれぞれについて丁寧に説明を受けました。

 リスクに関する報告はWHOとも共通した項目でおこなわれますが、さらにリスクに対する報告の義務を課しているところが、WHOにはない特徴です。危機管理センターでは、500もの電話回線と40のビデオ、100の端末で各国・地域につながっていて加盟各国で密に情報を共有しています。

 たくさんの資料もいただきましたので、機会をみて読み込んでみたいと思います。

 

○バス移動で、ルクセンブルクからベルギー・ブリュッセルに

 

○その夜ブリュッセル発成田への便で翌日の夕方に日本へ帰国

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 最後の写真は、ブリュッセルでの昼食場所の隣の建物。グランプラスという有名な広場にあるもので、白鳥の飾りがしつらえられているこのレストランの2階が、マルクスが、仲間らと「共産党宣言」の起草にあたって論議をした場所だとか。記念に1枚撮りました。

 非常に濃密な時間でした。ここで得たことをさらに深めて今後に生かしていきたいと思います。